俳句(3/31掲載)

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【石母田星人 選】


筆塚の筆の一文字魚は氷に   石巻市桃生町/西條弘子

【評】日和山公園には文学碑が並ぶ。見て回ると、風化している碑も多く読み取りには苦労する。疲れた目に元気をくれるのが、この筆塚碑の「筆」の鮮明な一文字。大きくて格調高くのびやかに刻まれている。あの文字の中に初春の凛とした印象を捉えた。


金華山海の眼をした春の鹿   多賀城市八幡/佐藤久嘉

【評】霊場の島には神の使いの鹿がいっぱい。その中の孕(はら)み鹿の姿を「海の眼をした」と巧みに表現。


ひらひらと慰霊碑の上初蝶来   石巻市新館/高橋豊

【評】複雑に交錯する感情に包まれながら慰霊碑の前に立つ。そこに今年初めての蝶の舞。印象鮮やか。


北上川(きたかみ)の砂を吐きたる蜆汁   石巻市小船越/芳賀正利

大謀網沖に広げて鳥曇   石巻市相野谷/山崎正子

春空へボールける子ら仮設跡   東松島市あおい/大江和子

三一一涙の記憶甦る   東松島市矢本/雫石昭一

こころなし温もり含む春の雪   石巻市向陽町/成田恵津美

悲しみは尽きることなし春怒濤   石巻市広渕/鹿野勝幸

岩海苔の巨大おにぎり父の里   石巻市流留/大槻洋子

日本語の奥の深さや寒明くる   石巻市駅前北通り/小野正雄

如月や白い風吹く北岬   石巻市中里/佐藤いさを

ひめやかに恋は錯覚雪女   石巻市門脇/佐々木一夫

ハスキーな先生の声梨の花   石巻市中里/川下光子

風が目を濡らして起こす昼蛙   石巻市桃生町/佐藤俊幸

登校の子日陰のスガこ踏みて割る   石巻市蛇田/石の森市朗

冬夕焼天照らす先シャッター街   石巻市開北/ゆき

二月尽ほっとため息受験生   石巻市恵み野/森吉子

少年の弾けし笑顔合格日   石巻市蛇田/櫻井節子

ベトナムの娘ら撮りまくる庭桜   石巻市湊東/三條順子

春まぢか幼児のこえ空いっぱい   石巻市流留/和泉すみ子

春の雪湯飲み茶碗の温かさ   石巻市湊/斎田流雲

春夕焼茜に染まりファンタジー   東松島市矢本/奥田和衛

余寒なお雪の白さに目を見張る   石巻市駅前北通り/津田調作

啓蟄を過ぐるも列島大雪に   石巻市三ツ股/浮津文好