俳句(5/18掲載)

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【石母田 星人 選】


花筏オール浮かしてボート行く   石巻市新館/高橋豊

【評】前方の水面には桜の花びらが浮かんでいる。発見したコックスの指示で、オールを水中から出して一休み。ボートは花びらの塊の横を静かに通り過ぎてゆく。映像が浮かんでくるような気持ちのいい光景。今夏の孫兵衛船のレースはきっとこのチームが勝つ。


山桜空を圧して咲きにけり   石巻市小船越/芳賀正利

【評】山桜の特徴は花と同時に生える赤い葉。野性味を帯びたこの色彩が「空を圧する」原動力となる。


初夏や畑の野菜に日のしづく   東松島市矢本/奥田和衛

【評】昨夜の雨か朝露か。畑の野菜に光の粒を見た作者。初夏の清々しい陽光を「しづく」と感受した。


静けさに湧く雲のあり空海忌   石巻市中里/佐藤いさを

古希過ぎて八十八夜の野を駆ける   石巻市湊/斎田流雲

飽きもせず飽きさせもせず植木市   石巻市桃生町/佐藤俊幸

囀に絡まるごときしじまかな   石巻市駅前北通り/小野正雄

五月来る一年生に面構へ   石巻市桃生町/西條弘子

入学か定期船から手を振る子   多賀城市八幡/佐藤久嘉

足止めの渡り廊下やつばめくる   石巻市流留/大槻洋子

人あまたつばめせはしく道の駅   石巻市広渕/鹿野勝幸

海色に染まりて夢中潮干狩   石巻市門脇/佐々木一夫

健気なる寒芍薬のふかき白   石巻市丸井戸/水上孝子

生きること少しは楽し木の芽和え   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

余韻まだそこはかとなく桜かな   石巻市向陽町/成田恵津美

わが街の自慢のさくら散るも美し   石巻市蛇田/石の森市朗

葉桜の祭りのあとのざわめきよ   石巻市流留/和泉すみ子

再入院の卒寿さげくるさくらもち   石巻市開北/ゆき

雲眺め風に吹かれて春過ぐる   石巻市渡波/阿部太子

桜咲き新聞部てふ青春よ   石巻市渡波町/小林照子

弟を荼毘に付す日や花の雲   石巻市小船越/堀込光子

山鳩や声くぐもりて春の朝   女川町旭が丘/阿部重夫

春耕や肥料一台購入し   石巻市のぞみ野/阿部佐代子

春の海潮の流れに夕日浴び   石巻市桃生町/西條和江

温暖化うつきの夏日めづらしや   石巻市三ツ股/上品夢好