俳句(6/29掲載)

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【石母田 星人 選】


めまとひを払ひ語り部かたりたる   石巻市中里/佐藤いさを

【評】東日本大震災の記憶と教訓を伝える語り部。上五「めまとひ」は小さな羽虫のこと。ひと塊になり飛び回って人間の顔にまとわりつく。それを払ったという表現だけで、猛暑の中の厳しさが伝わってくる。


緋芍薬晶子のごとく飾りけり   石巻市小船越/堀込光子

【評】毎年飾る時は、晶子の<緋芍薬さします毒をうけしより友のうらやむ花となりにき>を口ずさむのだろう。感動した表現は心にすみついてしまうのだ。


地べた這い野生の感の素足かな   石巻市桃生町/佐藤俊幸

【評】畑などの土の上で素足になったのだ。足の裏からぬくもりに似た「野生」が、はいのぼってくる。


釉薬のふた色被せ清和かな   石巻市新館/高橋豊

立葵明日へ明日へと伸びて咲き   石巻市門脇/佐々木一夫

ゆつくりと風車の廻る麦の秋   石巻市桃生町/西條弘子

写真館イサムノグチの首夏の庭   石巻市丸井戸/水上孝子

月山に命はぐくむ岩清水   石巻市蛇田/石の森市朗

ギターやめば地球いっきに皐月の夜   石巻市流留/大槻洋子

掘りたての筍里の景連れて   東松島市矢本/田舎里美

夏野菜主役になりて道の駅   石巻市湊/斎田流雲

夏嵐空いつぱいに木々のこえ   石巻市流留/和泉すみ子

一年坊主またも歯が抜け柿の花   石巻市開北/ゆき

土の顔見たさに今日も草むしり   石巻市広渕/鹿野勝幸

故郷は燕帰れどがらんどう   石巻市蛇田/櫻井節子

原発の庭にほころぶ春のバラ   東松島市赤井/志田正次

おもたせは山の話とたかんなと   松島町磯崎/佐々木清司

花揺らし花粉まみれの大き蛇   石巻市小船越/芳賀正利

張り替へし網戸から見る庭景色   石巻市中里/川下光子

テノールの羽をひろげて川鵜かな   多賀城市八幡/佐藤久嘉

明滅のリズム刻んでホタルとぶ   石巻市元倉/小山英智

父の日や作業着の影揺れ動き   東松島市あおい/大江和子

アロハシャツ介護ホームの音楽会   石巻市渡波町/小林照子

デイの名は花いちもんめ夏の雲   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

海鞘が来た夏の暑さと夕風と   石巻市駅前北通り/津田調作