俳句(7/27掲載)

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【石母田 星人 選】


子燕は幼さ掬うように飛ぶ   東松島市矢本/田舎里美

【評】飛ぶ練習を始めたばかりの子燕。高速で飛ぶ親鳥と違い心もとない。「幼さ掬う」の表現が光る。


海霧深し賢治の歌碑や寂光土   東松島市赤井/志田正次

【評】宮古の浄土ケ浜。そこに建つ宮沢賢治の歌碑「うるはしの海のビロード昆布らは寂光のはまに敷かれひかりぬ」中の「寂光のはま」からイメージを膨らませた。海霧が賢治の内面世界への入り口のようだ。


アメンボに戦争とはと問うてみる   石巻市渡波町/小林照子

【評】水面を滑るアメンボに戦争を問うたら動きを止めた。戦争をやめない人間の愚かさにあきれているのか、泣いているのか。動かぬまま流されていった。


若竹や尼の梵唄透き通る   石巻市中里/佐藤いさを

顔あげて益荒男ぶりや羽抜鶏   石巻市蛇田/石の森市朗

少年の平和詩にこめ沖縄忌   石巻市広渕/鹿野勝幸

河童忌や弟の声すがりつく   石巻市駅前北通り/小野正雄

瀧に向き一つ大きく深呼吸   石巻市桃生町/西條弘子

勢いをつけて歯科医の梅雨のドア   石巻市流留/大槻洋子

紫陽花や昨日の藍は今日の青   松島町磯崎/佐々木清司

桟橋に定期船着き夏つばめ   石巻市新館/高橋豊

梅雨の月八ツ手の見得の輝けり   石巻市開北/ゆき

梅雨の月うすぼんやりと山の上   石巻市小船越/芳賀正利

盛夏には似あわぬ爽風頬かすめ   石巻市渡波/阿部太子

マゼンタのインク交換冷素麺   石巻市中里/川下光子

南風や潮の香まとい友来たる   石巻市流留/和泉すみ子

倒れたる擬宝珠の花を仏花にす   石巻市丸井戸/水上孝子

花いばら昭和の小道たどりたり   石巻市門脇/佐々木一夫

赤松や福浦島の火照りかな   多賀城市八幡/佐藤久嘉

人去りて黄昏迫る夏の浜   石巻市元倉/小山英智

薄皮が新ジャガイモの味包む   石巻市駅前北通り/津田調作

母の服を案山子に着せて農守る   女川町旭が丘/阿部重夫

向日葵の茎の太さの頼もしき   石巻市向陽町/成田恵津美

親の手を止める子のうた蟻の列   石巻市小船越/堀込光子

もや立ちて眼に優し合歓の花   石巻市蛇田/櫻井節子