俳句(8/10掲載)

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【石母田 星人 選】


津波田に元の風情や青田風   多賀城市八幡/佐藤久嘉

【評】
順調に成長した一面の青田。その上を渡ってくる風が心地よい。よみがえった風が心に染みる。


銀漢や谷をへだててひとつの灯   石巻市流留/大槻洋子

【評】
銀漢(天の川)の下方に描かれているのは、灯台や漁船、街灯や家など、人間によってともされたひと粒の明かり。眼前の谷の存在が具象性を保証しているが、この天の川と灯の構図は、単なる写実の域を超えている。時空間の広がりが深い詩境へいざなう。


夏の海砂のお城は微睡みて   石巻市流留/和泉すみ子

【評】
精巧なこのお城はぎらつく陽光に照らされ、単調な波音を聞き続けている。「微睡(まどろ)み」には納得。


このままでいいのかと問う浜昼顔   石巻市桃生町/佐藤俊幸

B29の夏を語るや生身魂   石巻市小船越/堀込光子

空襲の語り継がるる晩夏の碑   石巻市中里/佐藤いさを

憲法の平和見守る終戦日   石巻市広渕/鹿野勝幸

戻せないジグソーパズル沖縄忌   松島町磯崎/佐々木清司

蒸し暑し「亡国の音」けたたまし   東松島市赤井/志田正次

名優の朗読親し夜の秋   石巻市中里/川下光子

青田行く一編成の石巻線   石巻市新館/高橋豊

ふるさとの歌声きこゆ天の川   東松島市あおい/大江和子

風紋を消しては注ぐ畦の夏   東松島市矢本/田舎里美

積乱雲尾根より生まれ空覆い   石巻市渡波/阿部太子

山滴る蕎麦屋の並ぶ奥会津   石巻市桃生町/西條弘子

片陰を押されて通る車椅子   石巻市小船越/芳賀正利

空弁当ゆれ黄帽子の粒の汗   石巻市開北/ゆき

サイフォンの珈琲の香や梅雨明ける   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

カップインナイスの掛け声夏の空   石巻市湊/斎田流雲

鰯雲あふるる空は暮れなづむ   女川町旭が丘/阿部重夫

髪まとめパールのバレッタつゆはれま   東松島市矢本/菅原京子

年輪を重ね山百合凛と咲く   石巻市水押/阿部磨

夏つばめマイホーム出来七年目   石巻市二子/小松道男

厨から筍ゆでる香りかな   石巻市桃生町/西條和江

向日葵のような笑顔のヘルパーさん   東松島市あおい/下山慶子