俳句(9/21掲載)

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【石母田 星人 選】


縄文の女神たおやか水澄めり   松島町磯崎/佐々木清司

【評】8頭身の均整のとれた土偶「縄文の女神」。真横から見ると、下半身に比べて上半身は薄く、特に腰のくびれが目立つ。その造形から、柔らかくたわみつつも、決して折れることのない強さを感じ取った。古語たおやかの発見と、季語水澄むの斡旋(あっせん)が見事。


製硯師素足のあぐら組直す   石巻市中里/佐藤いさを

【評】肩で彫り進めるなどかなりの重労働。一瞬のしぐさを活写した。こんな動きにも意味があるのだ。


ベランダの南瓜惑星ほどに生る   石巻市駅前北通り/小野正雄

【評】想像力によって、現実を超えた大きな世界を表現するのも俳句の面白さ、醍醐味といってよい。


蕎麦の花壮者を凌ぐ老いの鍬   石巻市元倉/小山英智

様々な鳥舞い降りる刈田かな   石巻市新館/高橋豊

遠花火夜の隙間に割り込みて   石巻市門脇/佐々木一夫

草の花施設の隅の守り神   石巻市桃生町/佐藤俊幸

蓮は実にまだ終りなき戦かな   石巻市桃生町/西條弘子

霧鐘塔花野になれば牛の声   石巻市流留/大槻洋子

山並のゆるき夏野を一両車   石巻市中里/川下光子

豪快がとうもろこしの醍醐味よ   石巻市向陽町/成田恵津美

三日月の顎へぶらんこ掛けやうよ   石巻市蛇田/石の森市朗

津波痕懐に抱き樫落葉   東松島市矢本/田舎里美

夏雲は龍の姿で天翔ける   石巻市渡波/阿部太子

蒼穹に目立ちたがりの百日紅   石巻市流留/和泉すみ子

聞き役のアイスクリームもうとけて   石巻市渡波町/小林照子

遠雷の北上川に手漕舟   石巻市小船越/芳賀正利

カート引く音とほのきて秋暑し   石巻市丸井戸/水上孝子

梨あまし兄は息災電話口   石巻市小船越/堀込光子

線香の煙揺らめき茄子の馬   石巻市湊/斎田流雲

盂蘭盆を各駅停車で戻りけり   多賀城市八幡/佐藤久嘉

敬老の日ゴルフボールの音ひびき   東松島市あおい/大江和子

遠雷に夏の思い出消えゆけり   石巻市駅前北通り/津田調作

これも幸せんこ花火と孫の笑み   石巻市湊東/三條順子

黄金色田んぼ一面赤とんぼ   石巻市須江/遠藤由美子