【石母田 星人 選】
縄文の女神たおやか水澄めり 松島町磯崎/佐々木清司
【評】8頭身の均整のとれた土偶「縄文の女神」。真横から見ると、下半身に比べて上半身は薄く、特に腰のくびれが目立つ。その造形から、柔らかくたわみつつも、決して折れることのない強さを感じ取った。古語たおやかの発見と、季語水澄むの斡旋(あっせん)が見事。
製硯師素足のあぐら組直す 石巻市中里/佐藤いさを
【評】肩で彫り進めるなどかなりの重労働。一瞬のしぐさを活写した。こんな動きにも意味があるのだ。
ベランダの南瓜惑星ほどに生る 石巻市駅前北通り/小野正雄
【評】想像力によって、現実を超えた大きな世界を表現するのも俳句の面白さ、醍醐味といってよい。
蕎麦の花壮者を凌ぐ老いの鍬 石巻市元倉/小山英智
様々な鳥舞い降りる刈田かな 石巻市新館/高橋豊
遠花火夜の隙間に割り込みて 石巻市門脇/佐々木一夫
草の花施設の隅の守り神 石巻市桃生町/佐藤俊幸
蓮は実にまだ終りなき戦かな 石巻市桃生町/西條弘子
霧鐘塔花野になれば牛の声 石巻市流留/大槻洋子
山並のゆるき夏野を一両車 石巻市中里/川下光子
豪快がとうもろこしの醍醐味よ 石巻市向陽町/成田恵津美
三日月の顎へぶらんこ掛けやうよ 石巻市蛇田/石の森市朗
津波痕懐に抱き樫落葉 東松島市矢本/田舎里美
夏雲は龍の姿で天翔ける 石巻市渡波/阿部太子
蒼穹に目立ちたがりの百日紅 石巻市流留/和泉すみ子
聞き役のアイスクリームもうとけて 石巻市渡波町/小林照子
遠雷の北上川に手漕舟 石巻市小船越/芳賀正利
カート引く音とほのきて秋暑し 石巻市丸井戸/水上孝子
梨あまし兄は息災電話口 石巻市小船越/堀込光子
線香の煙揺らめき茄子の馬 石巻市湊/斎田流雲
盂蘭盆を各駅停車で戻りけり 多賀城市八幡/佐藤久嘉
敬老の日ゴルフボールの音ひびき 東松島市あおい/大江和子
遠雷に夏の思い出消えゆけり 石巻市駅前北通り/津田調作
これも幸せんこ花火と孫の笑み 石巻市湊東/三條順子
黄金色田んぼ一面赤とんぼ 石巻市須江/遠藤由美子