俳句(10/19掲載)

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【石母田 星人 選】


ガザの子に天の涙か流れ星   石巻市元倉/小山英智

【評】流星への願いが届いたのだろうか。ハマスが生存の人質を解放した。ガザの和平へ一歩前進だ。


刈りあとに火照りあづけて稲刈機   石巻市広渕/鹿野勝幸

【評】作業を終えたばかりの刈り田を眺める作者。「火照りあづけて」がうまい。この火照りは、農家の労働の熱気をさす。収穫後の喜びと安堵(あんど)感が伝わる。


騒がしく大河の空を鳥渡る   石巻市小船越/芳賀正利

【評】今年もガンやカモなどの冬鳥がやって来た。何千キロもの長旅をして、無事に目的地の大河・北上にたどり着いた。騒がしく感じられた声だが、鳥たちにとっては、渡りを終えた歓声だったのかもしれない。


銀河濃し長きホームの停止線   松島町磯崎/佐々木清司

銀漢の牡鹿の海へ真珠生む   東松島市あおい/大江和子

秋出水養殖の棚揺るがして   石巻市門脇/佐々木一夫

雷神や実りのちから穂に注ぐ   東松島市矢本/田舎里美

年寄の日に抗うて紅をひく   石巻市丸井戸/水上孝子

八十は洟垂れ小僧鰹釣る   石巻市蛇田/石の森市朗

恋ひとつ棄てた零れた天高し   多賀城市八幡/佐藤久嘉

山粧ふ農夫農婦や日帰り湯   石巻市新館/高橋豊

灯火親し二十五時よりわが宇宙   石巻市開北/ゆき

西日差し読みかけの本古くなる   石巻市駅前北通り/小野正雄

仲秋のジャズこだまする楽都かな   東松島市赤井/志田正次

母のいぬ部屋は広くて鰯雲   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

だんご粉をこねる細指秋彼岸   石巻市中里/佐藤いさを

ふるさとは深き海霧エトランゼ   石巻市流留/大槻洋子

曼珠沙華あふるる丘の古刹かな   石巻市小船越/堀込光子

戯れる子猫の行方曼珠沙華   石巻市中里/川下光子

東屋に囁く新涼里の風   石巻市湊/斎田流雲

チャージして明日は通院照紅葉   石巻市蛇田/櫻井節子

秋の風素足にそより触れてゆき   石巻市流留/和泉すみ子

年老いて夫婦で歩く秋の風   石巻市二子/小松道男

秋立ちて風の匂ひも替はりけり   石巻市向陽町/成田恵津美

丸くなる月に合わせてすすきの穂   石巻市須江/遠藤由美子