【石母田 星人 選】
ガザの子に天の涙か流れ星 石巻市元倉/小山英智
【評】流星への願いが届いたのだろうか。ハマスが生存の人質を解放した。ガザの和平へ一歩前進だ。
刈りあとに火照りあづけて稲刈機 石巻市広渕/鹿野勝幸
【評】作業を終えたばかりの刈り田を眺める作者。「火照りあづけて」がうまい。この火照りは、農家の労働の熱気をさす。収穫後の喜びと安堵(あんど)感が伝わる。
騒がしく大河の空を鳥渡る 石巻市小船越/芳賀正利
【評】今年もガンやカモなどの冬鳥がやって来た。何千キロもの長旅をして、無事に目的地の大河・北上にたどり着いた。騒がしく感じられた声だが、鳥たちにとっては、渡りを終えた歓声だったのかもしれない。
銀河濃し長きホームの停止線 松島町磯崎/佐々木清司
銀漢の牡鹿の海へ真珠生む 東松島市あおい/大江和子
秋出水養殖の棚揺るがして 石巻市門脇/佐々木一夫
雷神や実りのちから穂に注ぐ 東松島市矢本/田舎里美
年寄の日に抗うて紅をひく 石巻市丸井戸/水上孝子
八十は洟垂れ小僧鰹釣る 石巻市蛇田/石の森市朗
恋ひとつ棄てた零れた天高し 多賀城市八幡/佐藤久嘉
山粧ふ農夫農婦や日帰り湯 石巻市新館/高橋豊
灯火親し二十五時よりわが宇宙 石巻市開北/ゆき
西日差し読みかけの本古くなる 石巻市駅前北通り/小野正雄
仲秋のジャズこだまする楽都かな 東松島市赤井/志田正次
母のいぬ部屋は広くて鰯雲 東松島市野蒜ケ丘/山崎清美
だんご粉をこねる細指秋彼岸 石巻市中里/佐藤いさを
ふるさとは深き海霧エトランゼ 石巻市流留/大槻洋子
曼珠沙華あふるる丘の古刹かな 石巻市小船越/堀込光子
戯れる子猫の行方曼珠沙華 石巻市中里/川下光子
東屋に囁く新涼里の風 石巻市湊/斎田流雲
チャージして明日は通院照紅葉 石巻市蛇田/櫻井節子
秋の風素足にそより触れてゆき 石巻市流留/和泉すみ子
年老いて夫婦で歩く秋の風 石巻市二子/小松道男
秋立ちて風の匂ひも替はりけり 石巻市向陽町/成田恵津美
丸くなる月に合わせてすすきの穂 石巻市須江/遠藤由美子