俳句(11/2掲載)

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【石母田 星人 選】


山粧ふ谷にこぼるる女声   石巻市桃生町/西條弘子

【評】山頂から見下ろしたのだろう。見事な紅葉が谷間を彩る。女性たちの歓声がキラキラと輝いた。


電線を揺らして並ぶ秋つばめ   石巻市蛇田/石の森市朗

【評】この時季は、カモやガン、コハクチョウなど北方から渡って来る鳥たちがいる一方、南方へ帰って行く鳥もいる。子育てを終えたツバメもそうだ。半年ばかり過ごした石巻の風景を、目に焼き付けているのだろうか。長旅へ挑む前の儀式のようにも見える。


曼珠沙華やんちゃなゴンが見えかくれ   石巻市渡波町/小林照子

【評】実際には犬なのだろうが、新美南吉の童話のキツネが浮かぶ。日常に出現したメルヘンの世界。


片足の遮光器土偶草紅葉   石巻市中里/佐藤いさを

闇の濃き方よりせまる虫の声   石巻市小船越/芳賀正利

海面に満月の影くっきりと   女川町旭が丘/阿部重夫

万葉の和歌の小径に桔梗かな   多賀城市八幡/佐藤久嘉

朗読の八雲怪談蘆の花   石巻市中里/川下光子

読み通す震災詩集冬隣   石巻市流留/大槻洋子

秋の海静まりゆきて十四年   石巻市流留/和泉すみ子

無花果や自分の命包み込み   石巻市桃生町/佐藤俊幸

白鷺や刈田に寡黙個々の貌   東松島市矢本/田舎里美

駅で逢い駅で別れる良夜かな   松島町磯崎/佐々木清司

ででぽぽのこゑの運びし秋の朝   石巻市丸井戸/水上孝子

木犀や姉が筆持つ書道塾   石巻市新館/高橋豊

老木にそっと寄り添う萩の花   石巻市のぞみ野/阿部佐代子

しばらくはとんぼの群れと土手を行く   石巻市向陽町/成田恵津美

病む親の耳目となりて胡桃割る   石巻市元倉/小山英智

酔芙蓉みつめてをれば酔ひにけり   石巻市門脇/佐々木一夫

日帰り湯疲れをほぐし夕苅田   石巻市湊/斎田流雲

残菊や古稀祝いたる同期会   東松島市赤井/志田正次

親不知抜く日のほほに秋の風   東松島市矢本/菅原京子

秋盛る大漁祭りのつかみ取り   石巻市駅前北通り/津田調作

町煙る炭火秋刀魚に人集う   石巻市水押/阿部磨

十月や二尺の鰻釣れにけり   石巻市三ツ股/浮津文好