俳句(11/30掲載)

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【石母田 星人 選】


一昼夜吹き荒れし宙月冴ゆる   東松島市赤井/志田正次

【評】強風が磨き上げて宙(そら)に清澄な空間が現れた。その舞台で寒月が輝く。五感に強く訴えかける句。


秋深し山道行けば万華鏡   石巻市向陽町/大渡清

【評】深まりゆく秋の山道を歩いて行くと、まるで万華鏡の中に入り込んだように景色が変化する。


襷取りラストスパート照紅葉   石巻市湊/斎田流雲

【評】中継所まで数百メートル。襷(たすき)を取り最後の力を振り絞る。この時季は駅伝の投句が多い。大抵、襷一字で駅伝を表す。省略が効いて結構だが、どの句も「襷をつなぐ」と慣用的な長い言い回しを使用する。省略の意味がない。この「襷取り」は躍動を活写して新鮮。


旅立ちのしらせを聞くや枯れ芭蕉   石巻市渡波/阿部太子

夜神楽のいよよ佳境に鬼女の舞   石巻市桃生町/西條弘子

息白くこれが命と思ひけり   石巻市流留/和泉すみ子

杖も椅子も声量豊か文化の日   石巻市流留/大槻洋子

秋の風壁から地へと蝉の殻   石巻市新館/高橋豊

霜の野をのそりのそりと牛通る   石巻市小船越/芳賀正利

塗り椀に久遠を浸すスーパームーン   石巻市開北/ゆき

冬うらら畝一筋の一呼吸   石巻市桃生町/佐藤俊幸

四方山のはなし埋もるる落葉掻き   石巻市丸井戸/水上孝子

聞きなれぬ言葉飛び交ふもみぢ狩   石巻市広渕/鹿野勝幸

ひょっこりと叔母の健脚実南天   石巻市中里/川下光子

秋夕焼白寿の翁の骨拾ふ   石巻市蛇田/石の森市朗

曼珠沙華つけ睫毛似の蕊装う   東松島市矢本/田舎里美

朝ぼらけ目にしみ入るや冬薔薇   石巻市門脇/佐々木一夫

雪吊りに鉢巻きしめて老庭師   多賀城市八幡/佐藤久嘉

畔行けば時雨の作る虹二重   石巻市小船越/堀込光子

友もまた昭和が好きで綿はんてん   石巻市渡波町/小林照子

紅葉川含みて水のやわらかさ   石巻市元倉/小山英智

怒りの目哀しき目あり檻の熊   松島町磯崎/佐々木清司

鴉群れ秋の夕焼け消す如く   石巻市駅前北通り/津田調作

収穫の苦労癒すや柿紅葉   石巻市水押/小山信吾

真っ先に新米持ちて友来たる   石巻市向陽町/成田恵津美