俳句(12/14掲載)

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【石母田 星人 選】


対岸の枯蘆原に雨の音   石巻市小船越/芳賀正利

【評】
「枯」は新鮮さや勢いの喪失の意だが、この句では雨音の増幅装置のようだ。これぞ石巻の音。


時雨虹エッセイ集の届きたる   石巻市小船越/堀込光子

【評】
前回入選の<畔行けば時雨の作る虹二重>を推敲(すいこう)し直した一句。前回作は季語時雨虹の説明にすぎなかった。だがこの句は、届いたエッセイ集を通して新たな角度から時雨虹に迫っている。読後感や装丁の美など、つかみとった感動を虹の姿と重ね合わせた。


四枚の鞐てまどる神の留守   石巻市流留/大槻洋子

【評】
「鞐(こはぜ)てまどる」だけで、久しぶりの和装だと分かる。思いもよらずはいた白足袋。想像が膨らむ。


網地島は祈りのかたち鳥渡る   多賀城市八幡/佐藤久嘉

鮟鱇鍋老いの仕立を疑わず   石巻市中里/佐藤いさを

今朝の冬霧の触手を招き入れ   松島町磯崎/佐々木清司

慰霊碑や今年もふわり綿虫来   石巻市新館/高橋豊

枯枝を鳥影チョコリ移りたり   石巻市丸井戸/水上孝子

山塊を貫く鉄路冬に入る   石巻市駅前北通り/小野正雄

日の温み四角く丸く冬座敷   東松島市矢本/菅原京子

散紅葉水底までも紅く染め   石巻市門脇/佐々木一夫

出漁期耳を劈(つんざ)く鰤起こし   東松島市赤井/志田正次

北国の女医の献身波の花   東松島市あおい/大江和子

時雨来る先着順のバスの席   石巻市桃生町/西條弘子

朝市に訛り飛び交い冬浅し   石巻市湊/斎田流雲

木枯しや老いを笑いつ吹き通る   石巻市駅前北通り/津田調作

ぽっかりと意識はぬけて紅葉散る   石巻市桃生町/佐藤俊幸

張り手技何か好まず花八つ手   石巻市渡波町/小林照子

あの頃の大事なおやつ柿たわわ   石巻市広渕/鹿野勝幸

星月夜ほとばしる句は母譲り   石巻市小船越/三浦順子

通学路御辞儀忙し枯尾花   石巻市元倉/小山英智

毛糸編む病持つ友一心に   石巻市流留/和泉すみ子

薄日さす狭庭を闊歩黄色蝶   東松島市矢本/田舎里美

天高し言語リハビリあいうえお   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

出てこない友の名前や小鳥来る   石巻市中里/鈴木登喜子