俳句(12/28掲載)

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【石母田 星人 選】


冬麗や背伸びして拭く窓ガラス   石巻市桃生町/西條弘子

【評】冬麗の穏やかな空や庭を見るため窓ガラスを拭く。いつもは届かない場所も「背伸びして」一心に清める。その行為を通して心をも磨いている作者。


ポケットの中にも枯野古着市   松島町磯崎/佐々木清司

【評】<雲の峰給湯室に小さき窓>の先行作がある作者。この句も構造は同じで、狭い入り口から広がる不思議な大空間が詩的な奥行きを感じさせる。寂しい枯野の雰囲気と、古着に潜む温もりの対比も魅力的。


PK戦枯芝に泣き崩れたる   多賀城市八幡/佐藤久嘉

【評】勝敗を決めるPK戦は残酷でドラマチック。「泣き崩れたる」で選手の気持ちが痛いほど分かる。


寒暁や水脈拡げゆく舟の反り   石巻市中里/佐藤いさを

初雪や遠慮がちなる朝の顔   石巻市丸井戸/水上孝子

冬の虹消えてつながる萬画館   石巻市門脇/佐々木一夫

何処より風を操り朴落葉   東松島市矢本/田舎里美

蒼翠を思い描くや冬木立   東松島市赤井/志田正次

冬天や島へ二便の鯨町   石巻市中里/川下光子

月光やくぢら切裂く大庖丁   石巻市蛇田/石の森市朗

天空を突くか白鯨雲砕く   石巻市向陽町/大渡清

冬耕の掘つては掘つて日暮れたり   石巻市広渕/鹿野勝幸

置き配は濡れて時雨は静かなり   石巻市流留/大槻洋子

AIが本読み上げる浅き冬   石巻市小船越/堀込光子

木守柿右に左に揺らす風   石巻市小船越/芳賀正利

連れられて院にゆく日や冬の蝶   石巻市開北/ゆき

テキパキとシュロのこも巻き冬支度   石巻市流留/和泉すみ子

冬耕の鍬は上下に凝りほぐす   石巻市桃生町/佐藤俊幸

木の葉散るひそひそ話してさうな   東松島市矢本/菅原京子

抱きしめて看取る愛猫小夜時雨   石巻市元倉/小山英智

初雪や手術を終えてもう十年   石巻市新館/高橋豊

しがらみを解きて軽きマフラーよ   石巻市小船越/三浦順子

降霜に草木眠りて声もなく   石巻市渡波/阿部太子

初冬やコーヒーの香と配膳車   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

しもやけの疼き子どもの頃のまま   石巻市向陽町/成田恵津美