俳句(3/29掲載)

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【石母田 星人 選】


手渡しに若布を買うて浜の市   石巻市桃生町/西條弘子

【評】句意は明瞭。この時季恒例の「浜の市」で、若布を買ったのだ。この句が強調したいのは「手渡しに」の上五。この表現があることで、売り手の表情や声が分かる。さらに市全体のにぎわいも感じ取れる。


黄水仙「風の電話」の十五年   東松島市赤井/志田正次

【評】岩手の大槌にある「風の電話」。あの電話が果たした役割と意義を、黄水仙の花言葉「私のもとへ帰って」「もう一度愛してほしい」を絡めて問う。


万歩計ずっと春風ついてくる   石巻市渡波町/小林照子

【評】ずっと寄り添う春の風。おかげで歩くことが苦にならず、応援されているような気分なのだろう。


奇跡とは春の海より帰る骨   石巻市蛇田/石の森市朗

壊滅の記憶は消えず春の雪   石巻市小船越/堀込光子

春の海底の津波を訝りぬ   多賀城市八幡/佐藤久嘉

夢の間に十五年経て窓の梅   石巻市二子/小松道男

浅蜊取り水平線にある記憶   松島町磯崎/佐々木清司

生き居るにあの日が消えない十五年   石巻市駅前北通り/津田調作

春の風慰霊碑ふわりとつつみおり   石巻市流留/和泉すみ子

大漁や帰る港は春夕焼   石巻市向陽町/大渡清

鞦韆や腕を櫂に空ひらく   東松島市矢本/田舎里美

春休み親子連れなる萬画館   石巻市門脇/佐々木一夫

この頃は口元ずっと早春賦   東松島市矢本/菅原京子

春雨や大河の流れきよらかに   石巻市小船越/芳賀正利

春宵やみすゞ詩集を拡げみる   石巻市丸井戸/水上孝子

手袋にユーカリの香のまだ残る   石巻市流留/大槻洋子

蝋梅や恥ずかしさうに塀の中   石巻市新館/高橋豊

冬薔薇とげの深紅にまづ唯我   石巻市開北/ゆき

参拝の鈴の音やさし春の風   石巻市元倉/小山英智

春灯やきらきら星のピアノ曲   石巻市中里/川下光子

草若葉その勢いの鍬を持つ   石巻市桃生町/佐藤俊幸

日々暮す人は旅人春夕焼   東松島市あおい/大江和子

理不尽なニュースが多し春めきて   石巻市広渕/鹿野勝幸

ベランダの満艦飾に春の風   石巻市わかば/千葉広弥