俳句(4/12掲載)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

【石母田 星人 選】


風抜けて椿一輪渦に消ゆ   石巻市元倉/小山英智

【評】上流のどこに咲いていたのだろう。椿の花が風の間を縫って流れてきた。花びらを散らさずに一花丸ごと落ちる椿。あたかも水面に咲いているようだ。臨場感あふれるこの句の眼目は「消ゆ」。真紅の姿を水中に消すことで、椿のあでやかさを強調している。


こも外れシュロの木深く息を吐く   石巻市流留/和泉すみ子

【評】こもを外したシュロの木の解放感とともに、春を迎えて安堵する作者の内面も示されている。


とりどりに心もち寄る彼岸参   石巻市丸井戸/水上孝子

【評】先祖を供養する彼岸の墓参り。家族や親族がさまざまな思いで集う。「心もち寄る」が優しい。


戦乱の地球に梅のひらきたる   石巻市蛇田/石の森市朗

手応へのなき重さなり蓬籠   石巻市桃生町/西條弘子

菜の花や光の皿に盛るパスタ   松島町磯崎/佐々木清司

ふりむけば光ばかりや春の霜   石巻市流留/大槻洋子

いち早きものの芽を愛で畑仕事   石巻市小船越/堀込光子

峠道見返る里に春しぐれ   石巻市向陽町/大渡清

乾く樹や息の嵩増す春の雪   東松島市矢本/田舎里美

言霊に押されし背中震災忌   石巻市湊/斎田流雲

部員漕ぐボートや暫し花見舟   石巻市新館/高橋豊

石積みの細流しぶき春謳う   石巻市開北/ゆき

春ひとり居合の稽古月光る   石巻市門脇/佐々木一夫

春深し石の地蔵も背伸する   石巻市小船越/芳賀正利

AIのさくさく開く目借時   石巻市中里/川下光子

春耕の米寿の息やすぐ荒れて   石巻市広渕/鹿野勝幸

春風や市場に響く競りの声   石巻市二子/小松道男

イサダ漁若き日の海郷の浜   石巻市駅前北通り/津田調作

春疾風せめて口紅つけて出る   石巻市渡波町/小林照子

病み上がり重湯の味や春隣   東松島市赤井/志田正次

指図する知ったかぶりの春祭   石巻市桃生町/佐藤俊幸

大般若僧侶転読パラパラと   石巻市桃生町/西條和江

乙女らの袴はにかむ卒業生   東松島市あおい/木皿ゆきこ

春待てど慰霊の石碑に綿帽子   石巻市水押/小山信吾