短歌(4/19掲載)

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【斉藤 梢 選】


かくまでに己さらして短歌もてココロの破片満月(つき)に差し出す   石巻市開北/ゆき

【評】満月の夜。作者は心情をあからさまに、偽りもなく詠む。「ココロの破片」は、時として人には見せられないけれども、月にならありのままに「差し出す」ことができるという、一つの告白。「月に願いを」「月に思いを託す」と詠む作品も多いが「月に差し出す」としたことで、この作品がとても切実なことを示していることが伝わってくる。「破片」が心にあるゆえの痛みを言葉にすることは晒すこと。しかし、己を晒すことには、覚悟が要る。鋭い心象歌。


さくら咲き出合い別れの節来たる慣れぬものなり別れ幾たび   東松島市矢本/川崎淑子

【評】「節来たる」という表現が優れている。桜が咲くと∧春∨を実感するのは日本人特有の古くからの四季感。咲く桜と散る桜にある喜びと無情。今年の桜は、あっと言う間に咲き、そして、名残を惜しむ間もなく散ったように思える。この作品の「出合い別れ」は、人と人の出会い別れを言い、さらに「さくら」との出合い別れをも「慣れぬものなり」として表現していると思う。感慨に言葉を与えて共感できる一首。


なんでなの畳の上で転ぶとは許せぬ自分もう卒寿でも   石巻市羽黒町/松村千枝子

【評】自分自身に向けての疑問と怒りの「なんでなの」だろう。「もう卒寿でも」と思っていても、転んだことは大変なショックで許せない。このような時∧短歌さん∨は唯一無二の話し相手になる。


朝日浴び種蒔きながら初音聞く梅香漂う畑に屈んで   女川町浦宿浜/阿部光栄

【評】春を迎えるよろこびが作品に満ちている。梅の香の漂う畑で初音を聞きつつ、命の種を蒔く。「畑に屈んで」の行為の表現で作者の姿が見えるようだ。


懐かしい昔の友から電話あり免許返納、杖も買ったと   東松島市矢本/畑中勝治

十五年心はあの日と同じまま津波があばれ親子をさらう   石巻市中里/のの花

小春日にミミズグズグズ蛇行する叱咤激励お互いの意気   石巻市桃生町/佐藤俊幸

ねこやなぎ朝日にひかる通学路黄色の帽子がふと立ちどまる   石巻市流留/大槻洋子

ウグイスの鳴くを待つ間の一休み団地の梅に春の兆しよ   石巻市二子/小松道男

卒業の季節になると口遊む友と歌いし「三月九日」   東松島市赤井/志田正次

隣家より干してる布団叩く音春の陽温く心も温し   石巻市不動町/新沼勝夫

久々に次とまりますのボタン押す無人になったバスを見送る   石巻市二子/北條孝子

ボツなれど今日の締めとしペンをとる夜烏の鳴きて淋しさつのる   石巻市桃生町/千葉小夜子

SOSわが人生のサインなりゆがみし心ゆがみしからだ   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

花日和カートに乗った園児たち和む思いに手を振り返す   東松島市赤井/茄子川保弘

庭隅でまた会えたねと声したよう振り向き見れば水仙の笑顔   石巻市鹿又/門間典彦

おだやかな春分の日の青い空仏壇に手を多いひとりごと   石巻市西山町/藤田笑子

話し中涙ぐまれてたじろげばゴメンナサイね花粉症なのと   東松島市赤井/佐々木スヅ子