俳句(6/21掲載)

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【石母田 星人 選】


隙間なく娘(こ)への一箱夏野菜   石巻市小船越/堀込光子

【評】丹精込めたさまざまな夏野菜。それを遠くの娘に送る。一箱にぎっしり詰め込んで、微妙に空いた隙間には野菜のほかに、ちょっとした生活用品なども入る。出来上がった一箱は母の愛情でぎゅうぎゅう。


少年の白きシャツより波の音   松島町磯崎/佐々木清司

【評】写生というよりは海での心象詠。白シャツはまぶしい。少年が着るとなおさら。成長期の未来形のそのまぶしさが視覚を超えて波の音になって届いた。


若葉風改札通る無人駅   石巻市向陽町/大渡清

【評】無人駅の改札を通るのは人ばかりではない。みずみずしい若葉を揺らした風も通り抜けてゆく。


梅雨空へ青き帯ひき仙石線   東松島市あおい/大江和子

被災地は万緑なしてなほ悠久   石巻市開北/ゆき

また揺れる大地なれども草萌ゆる   石巻市蛇田/石の森市朗

遠足の列伝承の学舎へ   石巻市新館/高橋豊

絹さやも蔓を絡める恵雨かな   石巻市湊/斎田流雲

百態の風に合わせて蜘蛛の糸   石巻市桃生町/佐藤俊幸

限りなき挑戦となる草むしり   石巻市広渕/鹿野勝幸

浜仕事とだえて久し桐の花   石巻市流留/大槻洋子

新緑や寝転びながら舟を漕ぐ   石巻市二子/小松道男

夏蝶と会話つながり母と居る   石巻市渡波町/小林照子

付き添ひに心躓き土筆摘む   石巻市駅前北通り/小野正雄

遠嶺晴風の広がる植田かな   石巻市桃生町/西條弘子

植田道ふき渡る風みどり色   石巻市流留/和泉すみ子

葉桜の木陰に座して空青し   石巻市元倉/小山英智

人の名の出てこぬままに山笑う   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

捲るたび夏も膨らむ頁かな   東松島市矢本/田舎里美

本開く窓際の席新樹光   石巻市中里/川下光子

薫る風若きそば屋のフルコース   石巻市丸井戸/水上孝子

世界中「アンネのバラ」を求めたし   東松島市赤井/志田正次

一八や咲きては枯れての芝居見せ   石巻市渡波/阿部太子

緋のつつじ吾家を染める如く咲き   石巻市駅前北通り/津田調作

雨あがり若木波うつ通り風   塩釜市新浜町/佐々木夏子