【石母田 星人 選】
チューリップまるで混声合唱団 東松島市矢本/菅原京子
【評】赤白黄と多くのチューリップが並んでいる。その様子を混声合唱団のようだと詠む。素朴な比喩のようだが、「混声」の表現が巧み。色彩を聴覚で感受して、それぞれの色に女声と男声を充てているのだ。
春陰や耳に新たなやまひ入る 石巻市丸井戸/水上孝子
【評】自身の体調の変化とも読めるが、ここは時事句とみた。ハンタウイルス感染症など、新たな病名を耳にした心情を、季語「春陰」を用いてうまく表現。
朝日浴び我の足音柿若葉 石巻市桃生町/佐藤俊幸
【評】柿若葉の透き通るようなみずみずしさは見る者に元気をくれる。朝の散歩の足取りも軽くなる。
人の世は覚めてはかなき春の夢 石巻市門脇/佐々木一夫
駅ピアノ桜の国へ行く途中 石巻市渡波町/小林照子
雑踏を抜ければ友の笑みや春 東松島市矢本/田舎里美
廃校の決まりし校舎麦の秋 石巻市蛇田/石の森市朗
大空へ深き呼吸の花水木 東松島市野蒜ケ丘/山崎清美
おだやかな曲線となり田植終ゆ 石巻市広渕/鹿野勝幸
サーファーにジャンボ機の腹迫りくる 多賀城市八幡/佐藤久嘉
投票の朝の茅花のゆれうごき 石巻市流留/大槻洋子
文庫本どれも百円夏落葉 松島町磯崎/佐々木清司
石楠花や欄干のなき橋渡る 石巻市中里/川下光子
薫風や朝のあいさつ通学路 東松島市あおい/大江和子
青き風受けてあまたの五月鯉 石巻市小船越/堀込光子
万緑や遠くの山をつれて来る 石巻市湊/斎田流雲
万緑や病室の中一輪花 石巻市新館/高橋豊
小鳥鳴き仰ぐ大樹や青時雨 石巻市元倉/小山英智
青笹や雨の粒落ち海近し 石巻市二子/小松道男
おぼろ夜の認知症なる横顔よ 石巻市開北/ゆき
聞こえ来る山ほととぎす里の朝 石巻市向陽町/大渡清
友来たる竹の子ごはんタッパ詰め 石巻市流留/和泉すみ子
逃水を搦め取れない歯痒さや 東松島市赤井/志田正次
五月晴れ鼓笛浮き立つ村まつり 石巻市わかば/千葉広弥
田植機の後追い鳥は白鷺か 石巻市水押/小山信吾