【石母田 星人 選】
最上川舟唄に乗る赤とんぼ 石巻市渡波町/小林照子
【評】舟下りの船頭が唄う最上川舟唄。聴きほれていると舟に赤とんぼが現れた。調子を合わせるようにホバリングしながら、とんぼもうっとり聴いている。
朴島の端から端へ蝉しぐれ 多賀城市八幡/佐藤久嘉
【評】松島湾の浦戸諸島にある朴島は周囲約2キロの有人島。タブノキの原生林がある。その古木を舞台に蝉が鳴く。「端から端へ」がうまい。島全体が鳴いているようにとれる。固有名詞で句の奥行きが増した。
霊棚や指さしかぞへ離れ見て 石巻市流留/大槻洋子
【評】先祖の霊を迎え、安置する棚をこしらえた。動詞四つを重ねた効果で立派な出来栄えと分かる。
列島のいつもどこでも秋出水 石巻市広渕/鹿野勝幸
よろけても大地に立つや裸足の子 石巻市小船越/芳賀正利
夕凪やハサミ広げて汐だまり 石巻市元倉/小山英智
蒼穹に雲くっきりと今朝の秋 石巻市流留/和泉すみ子
秋の雨糸筋刺さる露天の湯 石巻市新館/高橋豊
掃き浄め御霊の道や盆の風 石巻市湊/斎田流雲
いくつもの楽しみ植えて盆支度 石巻市桃生町高須賀/佐藤俊幸
盆三日仏の飯の献立表 石巻市桃生町寺崎/西條弘子
盆灯籠遠い記憶の蘇る 石巻市桃生町寺崎/西條和江
夕焼雲戦火いつ止むこの地球 石巻市蛇田/石の森市朗
夏色の開幕戦の校歌かな 東松島市矢本/菅原京子
食む命天の川へと問いかける 石巻市二子/小松道男
トンネルをくぐり終へればつたすだれ 塩釜市新浜町/佐々木夏子
巻貝の耳に海より秋の声 松島町磯崎/佐々木清司
甲高き蚊の音去りて耳軽し 東松島市矢本/田舎里美
海鳴りを浴びに帰省子明けの空 石巻市開北/ゆき
狭庭よりこゑかぎりなき秋の蝉 石巻市丸井戸/水上孝子
この夏を一気呑みする星の下 石巻市門脇/佐々木一夫
音もなく落ちる点滴遠花火 石巻市向陽町/大渡清
撤下せし供花に秋の蚊の一撃 東松島市赤井/志田正次
「しおがま」の塩梅こそや新走り 東松島市あおい/木皿ゆきこ
金婚や虹をくぐりて海の宿 白石市堂場前/伊藤多恵子