河北新報特集紙面2015

2016年3月16日 河北新報掲載
レポート 観光型支援プロジェクト 出会った、受けとめた。町の魅力と人の思い。

レポート 山元町を深く知るツアー 実施/2016年1月30日 参加者/54人 観光型支援プロジェクト 出会った、受けとめた。町の魅力と人の思い。

540通もの応募をいただいた今回の山元町ツアー。福島、東京、大阪など県外からも多数の参加となりました。1日を通じて「やまもと語りべの会」の渡邉修次さんら地元の皆さんに、震災を体験し、震災を乗り越え、ここで生活している人だからこそできる山元町の案内をしていただきました。地元産のホッキ飯、地域の農業をけん引する園芸施設でスタッフの皆さんがおいしさを追求して育てたイチゴも堪能。地元の皆さんと触れ合いながらお菓子を作ったり、迫力ある和太鼓を楽しんだりするひとときもありました。被災と復興、そして山元町の将来に向けた取り組みなど、町の皆さんの思いをしっかり受けとめた1日となりました。

やまもと語りべの会会長
渡邉修次さん

もっといい山元町にしていくために

次の災害に備えて悲しい思いをする人を少なくする、震災前よりもっといい古里をつくることが亡くなった人たちに報いる、それが残された私たちの道だという思いで語りべを続けています。そして、いい古里をつくっていくためにも、山元町の良さを私たち自身が見つめ、せっかく訪ねていただいた方たちにも伝えていきたいと思っています。今回のツアーを通して山元町の魅力の一端を感じとっていただければうれしいです。

私たちだからこそ持ち帰れるもの

フォトジャーナリスト 安田菜津紀さん

今日は参加者の皆さんと同行させていただきました。全壊した中浜小学校の前で、語りべの皆さんは「地元の人の中には、沿岸になかなか近づけない方もいる」と話していました。なので、訪れた私たちだからこそ行ける、私たちだからこそ持ち帰ってこれる何かがあるのだと思います。まだまだ乗り越えていかなければいけないものがある一方で、山元町にはイチゴやリンゴなど人を呼び込めるような宝ものがたくさんあると実感できました。その両面を、私自身も含めて地元に持ち帰っていければと思います。

東京の「丸の内東北応援フェア」で
安田菜津紀さんと渡邉修次さんがトークショー

山元町の今を多くの人に

3月3、4日に開催された「丸の内東北応援フェア」(主催三菱地所、河北新報社)のステージで、首都圏での風化を防ぐことを目的として安田菜津紀さん、渡邉修次さんによるトークショーを開催。安田さんが撮影したツアー当日の写真などを見ながら、山元町の現状を来場者に伝えました。

被災の傷跡、復興の兆し山元町の今を実感

真新しい災害公営住宅、工事中の常磐線高架線路など復興の兆しも見られましたが、まだ被災の傷跡も。全壊したままの旧中浜小学校では、参加者は積もった雪もいとわず校舎の近くに。津波は必ず来る、歩いて逃げたら間に合わない、上で待とう、との判断で児童・教職員・近隣住民約90人が屋上の三角屋根に逃れて助かった、と渡邉さんが解説。

旧山下駅前にある橋元商店では山元町特産品を販売。向かいの同店倉庫「みんなの写真館」では、中学生などによる写真修復活動で提供してもらった写真や震災直後の写真など約1500枚を展示しています。

山元産のホッキ飯とイチゴ狩りを満喫

昼食は、地元産のホッキ貝で作った地元「魚やたけだ」製ホッキ飯。新鮮な旬のホッキをそのまま生かしたやわらかく豊かな味わいが絶品でした。

先端施設園芸に取り組む「GRA」では、4000平方メートルのハウスで約3万株のイチゴを生産。時期によって最適の品種を提供しています。この日は甘さと香りが際立つとちおとめ。至福のひとときを味わいました。

山元町特産リンゴでコンポートづくり

「幸街堂」にて町内洋菓子店さんの指導で甘いリンゴ煮をわいわい楽しく作りました。山元町のリンゴは昔ながらの直売所販売が多く、その確かなおいしさが評判です。

ツアー最後に、感動の体験

山元町役場敷地内の「ふるさと伝承館」では、被災地で見つかった写真を展示・返却しています。ホールで町内の和太鼓集団「風雲乱打舞」が演奏を披露。体の奥底に響く太鼓の音に、参加者は元気をもらいました。訪れた人がメッセージを書いた「幸せの黄色いハンカチ」を、地元の皆さんが手で掲げてツアー一行を見送ってくれました。

農業生産法人
株式会社GRA
須藤洋さん

イチゴ狩り、満喫できましたか

GRAは、山元ならではのおいしいイチゴをつくろうと、スキルをもったスタッフが一生懸命育てている施設です。実際に来ていただいて、たくさんのことを知っていただきたいと思います。最高のおもてなしで歓迎します。今回もそんな気持ちでイチゴ狩りを提供しました。

一般社団法人
ふらっとーほく代表
阿部結悟さん

訪れた人に町の良さを発信

山下地区の空き店舗を活用した交流拠点「幸街堂」の運営をさせていただいてます。地場産品の展示や教室を開いたり、ここで町の人がいろいろな活動をしています。リンゴ煮づくりをしながら、山元町のことや地元の人のことも知っていただく場になれたらいいなと思います。

今回の「今できること」の紙面をPDFで見る