河北新報特集紙面2021

2022年2月28日 河北新報掲載 
食べて、元気に、みやぎの復興

食べて、元気に、みやぎの復興食べて、元気に、みやぎの復興

 生産者のたゆまぬ努力はもちろん企業の厚い支援もあって、 宮城県における農畜産業や漁業は未来へ向けて着実に歩みを進め、 新たな可能性を切り拓いています。「今できることプロジェクト」では、“みやぎの食のために、今できること”をテーマに、県内各地の「食の躍進」へ取り組む人や活動を紹介しています。 地域の生産現場には長い時をかけて培われてきた食文化の知恵が息づき、それを継承しながらマーケットの開拓や新商品の開発など、 未知のフィールドに挑む人々の意欲と情熱に満ちあふれています。食の宝庫である宮城県の現状を知り、食べて、みんなで応援していきましょう。

村井県知事からのメッセージ
みやぎの“食“で復興と発展を応援
村井 嘉浩
宮城県知事 村井 嘉浩
 宮城県は、肥沃な大地、豊かな森、澄んだ海の恵みにより、多彩で豊かな食材が育まれる「食材王国」です。
 東日本大震災からまもなく11年が経過します。新型コロナウイルス感染症という世界的な危機を乗り越えて、県内の賑わいを取り戻し、引き続き復興の完遂とその先のさらなる躍進を目指してまいります。
 皆さまには、つくり手の愛情に育まれた宮城の食材や加工品をぜひご堪能いただき、ともに「食材王国みやぎ」の復興と発展を応援していきましょう。
1.予測が難しい気候に抗いながら豊かな実りの回復を目指して。
ナシ栽培…小野寺喜一さん(角田市)

 角田市は蔵王・利府町に次ぐナシの産地で、栽培面積は15ヘクタールに及びます。自宅の周囲に広がる広大なナシ園で4品種を手掛けるみやぎ仙南農協角田梨部会長の小野寺喜一さんもその1人です。
 熟練の栽培家である小野寺さんですが、昨年春の凍霜害(とうそうがい)で見込んでいた収穫量の3分の1になってしまった損失に肩を落としています。3月は例年より温暖で花の開花が早まり、4月になって氷点下の冷え込みになり花が枯死してしまったのが原因。凍霜害を防ぐ手段として深夜から明け方の間、火をたいて温めるのが有効ですが、それが何日も続けば、そのコストと労力は計り知れません。角田梨部会では、氷結を防ぐ効果がある肥料の散布で対策を進めています。
 長年、小野寺さんのナシを楽しみにしている消費者の顔を思い浮かべながら、「不作が続きましたが今年こそ、たくさんのおいしいナシを皆さんにお届けしたいですね」と、固い決意を表してくれました。

食べて、元気に、みやぎの復興
冬の間に行う枝の剪定が、春以降の果樹の成長に重要となるそう。

食べて、元気に、みやぎの復興
1.5ヘクタールに及ぶ敷地で丹念に手を掛けて育て上げ、収穫時期を迎えてたわわに実ったナシ園。

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特に凍霜害の被害が大きかった晩生品種「新高」の味わいが自慢だと語る小野寺さん。

【お問い合わせ】みやぎ仙南農業協同組合
柴田町西船迫1-10-3 TEL.0224-55-1590
https://www.ja-miyagisennan.jp/
◎みやぎ生協各店で販売
2.若者と共に汗を流して土を耕し地域の新しい農業文化づくりを目指す。
サツマイモ栽培…熱海光太郎さん(東松島市)

 震災による津波被災により、農業の加速的な衰退が懸念された東松島市牛綱地区。この地で35代目を継ぐ農家の熱海光太郎さんは、地元の農業文化を再興するためには次世代の育成が必要不可欠だと考え、未経験でも意欲あふれる若者を受け入れるために「よつばファーム」を創業しました。
 熱海さんは開業当初から、若い社員たちと共に学び合う姿勢を信条に、住宅跡地や不耕作農地を改良しながらの多品目野菜の栽培など、未知の領域へ意欲的に挑んでいきました。現在は、ロロンかぼちゃや虎太郎西瓜など特色のある野菜の生産に注力。中でも、この地域元来の砂質土壌で栽培した「伊達娘さつまいも(商標登録)」は、しっとりとした食感と豊かな風味が好評を博しています。
 今後は、より安定した生産量と出荷品質の向上を第一の目標に見据えながら、「目の前には次々と問題が現れてきますが、今は社員とともに新たな課題に取り組み、一つ一つクリアしていくことを楽しんでいます」と、頼もしい笑顔とともに語ってくれました。

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「高級ブランドを作るのではなく、おいし い野菜をより多くの人の手に届けたい」と語る 熱海さん。

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米の貯蔵庫を活用し、収穫し たサツマイモを14度前後の温度で保存して追 熟することでおいしさがアップ。

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出荷の時を待つ「伊達娘さつまいも蔵出し金時」。

【お問い合わせ】株式会社よつばファーム
東松島市牛網字平岡36 TEL.0225-25-4641
◎宮城県内のスーパーや量販店、大型店などで販売
3.地名を冠する伝承野菜の誇りを親子2代で支える絆の力。
セリ栽培…髙橋正夫さん・裕司さん・泉さん(石巻市)

 石巻市河北地区で江戸時代より受け継がれてきた「河北せり」は、2020年に農林水産物や食品のブランドを守る地理的表示(GI)保護制度の登録産品に加わりました。昨今の仙台セリ鍋ブームも後押しして、ますます注目度が高まっています。
 10月から始まった根セリの収穫のため、真冬の冷たい水に浸かりながら作業するのは、いしのまき農協セリ部会の髙橋正夫部会長。セリの難しさを聞くと「毎年、勉強だよ」と謙虚な答えが返ってきました。娘婿の裕司さんは、美容師からの転身。「セリ部会の平均年齢が60〜70代なんで、若手として気に懸けてもらっています」と笑います。
 2月で根セリが終了すると、4〜5月に葉セリの出荷が待っています。葉セリは、同地区の在来種「飯野川在来」のみを指し、みずみずしい歯ざわりとクセがなく爽やかな香りがたまりません。「河北せりは、春こそ自慢の味わい。地域の子どもたちにもこの味を知ってもらい、守り伝えていって欲しいですね」と、娘の泉さんは語ってくれました。

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左から髙橋裕司さん、正夫さん、泉さん。

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地下から湧き出る伏流水を利用したセリ田での作業風景。

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葉セリは、やわらかい芽吹きの時期だけしか味わえない贅沢な春野菜で、新鮮なものをサラダや浅漬けなどで食べるのがおすすめだそう。

【お問い合わせ】いしのまき農業協同組合 河北営農センター
石巻市小船越字山畑390 TEL.0225-62-3930
https://www.ja-ishinomaki.or.jp/
◎みやぎ生協各店で販売
4.蔵王ならではの魅力が味わえる健康で味わい豊かなチーズ。
国産チーズ製造…宮沢秀夫さん(蔵王町)

 雄大な蔵王連峰をバックに、広大な牧場やチーズ工場、観光施設などを営む「蔵王酪農センター」。1980年に国産ナチュラルチーズの実験製造工場を建設してから42年、今や蔵王町土産の代表格であるクリームチーズをはじめとする多彩な乳製品の製造を続けています。「外国産のクセが強くて高価なチーズばかりだった当時、国産にこだわった日本人の口に合う味わいを目指して事業がスタートしました」と語るのは、同センター理事・営業部長の宮沢秀夫さん。地産地消をモットーに製造技術の向上に努めながら、幼児や妊婦でも安心して食べられ、地元の誇りとなる「蔵王チーズ」ブランドを確立しました。
 現在、定番人気にとどまらず、麹と酒粕で熟成させた日本オリジナルのチーズなど、新境地となる商品開発にも意欲的。宮沢さんに今後の展望を聞くと、「蔵王町に足を運んでくれるきっかけとなるよう、地域の農産物や魅力の発信にもより力を入れていきたいですね」と話してくれました。

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看板商品の「蔵王クリームチーズ」は9種類のフレーバーをラインアップ。白石市の和菓子店とコラボした「チーズ大福」も人気上昇中。

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直売店で新商品を案内してくれた宮沢秀夫さん。

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搾乳ロボットなどを備え、清潔な飼育環境を大切にした牛舎。

【お問い合わせ】一般財団法人 蔵王酪農センター
蔵王町遠刈田温泉字七日原251-4 TEL.0224-34-3311
https://www.zao-cheese.or.jp
◎工場併設の直売店、オンラインショッピングサイト、仙南地域の道の駅などで販売

みやぎの食のために、
今できること。
賛同企業の取り組み。

宮城の地場食材にこだわった多彩なレトルト食品を全国へ
NISHIKIYA KITCHEN

 「NISHIKIYA KITCHEN」は、岩沼市に本社を置くレトルト食品メーカーである株式会社にしき食品が展開する自社ブランドです。カレー、スープ、パスタソース、幼児食など、約100種類のレトルト食品を取り揃えています。
 現在、県産素材にこだわった「宮城の素材シリーズ」を企画・展開。この取り組みは2018年からスタートし、東日本大震災の被害が大きかった仙台市若林区井土地区で栽培されたネギを使用したポタージュなどを季節限定で販売中です。このシリーズを通して地元への貢献を続けながら、宮城のおいしい食材を全国の皆さんに楽しんでもらえるよう、今後も地域の生産者とともに取り組みを進めていきます。
食べて、元気に、みやぎの復興
パッケージにも産地や素材名、こだわりを詳しく紹介している「宮城の素材シリーズ」

全国を視野に販路拡大を目指す東北発の食ブランド
みやぎ生協・株式会社東北協同事業開発

 2015年に震災復興と東北地方の経済活性化(主に販路拡大)を目的に「古今東北」ブランドを立ち上げ、販売をスタートしました。「古今東北」商品は、東北のポテンシャルが秘められた商品ばかりです。その想いを「良し」とするリピーターが増えることで、作り手の収入が安定し、雇用や収量の拡大につながります。そのような取り組みを若い層にも認知してもらえるように宮城学院女子大学と「連携協力に関する協定」を締結しています。今後も「古今東北」は作り手の皆さんを応援していきます。
食べて、元気に、みやぎの復興
登録済み開発商品数は230品目に(2022年1月現在)