賛同企業の取り組み

2014年12月14日 河北新報掲載 食べて、元気に、みやぎの復興。

食べて、元気に、みやぎの復興。

生産者の方の頑張りや支援企業の皆さんのおかげで、みやぎの食は、着実に復興へと向かっています。
「今できることプロジェクト」では、「みやぎの食のために、今できること」をテーマに、県内各地の「食の復興」への取り組みを紹介します。
「みやぎの食の復興」について一緒に考え、みやぎの食に関心を持ち、食べて、みんなで応援していきましょう。

村井県知事からのメッセージ

宮城県知事
村井 嘉浩

合言葉は、みやぎの「食の復興、食で復興」

宮城県は、豊かな自然に恵まれた、四季折々の食材を楽しめる「食材王国」です。
県内では、「食材王国みやぎ」の震災からの復旧・復興に全力で取り組んでおります。
今回の特集では、「みやぎの食のために、今できること」をテーマに、「食の復興」に向けた取り組みについて紹介しております。
生産者の方々が手塩にかけた美味しい宮城の食材を、自信と責任を持って皆様にお届けしてまいりますので、ぜひお召し上がりいただき、「食」でみやぎをもっと元気にしていきましょう。

山里の地でイワナ養殖の伝統を、今に

イワナ養殖◎数又 貞男さん

お問い合わせ/岩魚の館 数又 電話0228-46-2136

栗駒山の中腹、栗原市耕英地区。清らかな湧き水が流れるこの地で、1971年にイワナの養殖が全国に先駆けて成功しました。その歴史と父の遺志を継ぎ、数又貞男さん(62)はイワナの養殖を続けています。2008年の岩手・宮城内陸地震では、湧き水が止まったり、いけすが壊れたり、東日本大震災では風評被害で出荷数が減るなど、何度も困難を乗り越えてきました。
養魚場の入り口には、妻八千代さん(62)と営む「いわなの館」があります。蒲焼きにしたイワナ丼、刺し身が評判です。「お客さんがおいしいって何度も来てくれるのがうれしくて」と八千代さん。まったく臭みがなく、身が引き締まって、上質な味わい。ここで食べると、川魚の概念が変わります。
数又さんは、昨年から新たに大型イワナの養殖に取り組んでいます。県の試験場(大和町)で開発し、新たな特産品「伊達いわな」として期待されています。数又さん含め県内3カ所で養殖され、今春から一部で販売。「刺し身がおいしくて、これからどんどん人気が出ますよ」と、数又さんも力を入れています。

大小11の養殖池が連なる

「生き物相手だから飽きない」と貞男さん

蒲焼きで味わうイワナ

「毎日見守って大切に育ててる」と2人

質のいい牛肉目指し、価値ある牛づくり

仙台牛肥育◎馬場 茂さん

お問い合わせ/みやぎ仙南農業協同組合 営農経済部畜産課 電話0224-55-1810

「せっかく丹精込めて育てても、出荷できずに死なせてしまった牛もいた」と、みやぎ仙南農協肥育牛部会の馬場茂部会長(60)は震災当時を振り返ります。取引価格の下落という苦境は今も続いています。
「田んぼもやってるけど、牛の方が面白くて、もう34年経つな」という馬場さんは、最高ランクの肉質を持つ黒毛和牛だけに与えられるブランド「仙台牛」生産のリーダー的存在。狭き門に挑むために「結局、いい仔牛から手を掛けて、いい牛をつくるしかない。質の劣る牛を安く仕入れて、高い肉にしようとしてもそれは無理」。通常の肥育牛とともに、馬場さんは質のいい母牛と生後間もない仔牛も育てています。約600頭を家族3人と従業員3人で飼育。牛舎はほぼ自作でお金を掛けず、その分いい牛をそろえることにお金を使う、牛舎はいつもきれいに清潔に保つ、というのが馬場さんの流儀です。
2017年秋、優れた和牛の品質を競う5年に一度の全国大会が宮城県で開催されます。仙台牛の実力を全国に知らせる絶好の機会。「いい成績がとれるように、もう仕掛けは始めてるよ」と馬場さんは話します。

まもなく出荷の時期を控える肥育牛と馬場さん

母牛は娘のちえみさんの担当。師走に4頭が臨月を迎える

生後11日目の仔牛への授乳

寒さが育てた、甘さとうま味のほうれん草

ちぢみほうれん草生産◎半澤 こうさん

お問い合わせ/石巻青果花き地方卸売市場 電話0225-83-6111

東松島市矢本地区では、古くから寒締めによるちぢみほうれん草が生産されています。この辺りは、震災での浸水被害やその秋の台風の影響で、出荷できなかったり、出荷量が減ったりする事態が起きましたが、少しずつ乗り越えてきました。
11月中旬過ぎ、ほうれん草は霜が降りて寒気にあたると葉がぎゅっと縮んで肉厚になり、甘さとうま味が増します。おひたしにすると、絶品です。本当にいいものを供給したいという生産組合「やっちゃ葉会」では、基準値より厳しい糖度9以上にならないと出荷しません。この日の計測は12でした。
会長の半澤こうさん(66)は「堆肥を使った土づくりから手間掛けて、やっぱり冬が大変。雪の日は畑にお布団を掛けるのよ」。雪をかぶると出荷できないため、シートで覆うなど泥んこになっての作業が続きます。
ハウス栽培のように安定した出荷が見込めなくても「約束した量はみんなで助け合って、なんとしても守る」。少し手が空けば作業小屋に集まって、お茶飲み。「食べてくれて、おいしいって言ってもらえるとうれしくてね」と、笑顔があふれます。

やっちゃ葉会の皆さんと出荷先の石巻青果・遠藤慎一さん(後列右端)

「おいしいし、安全・安心」と半澤さん

「つくるの楽しいもの」と根元やよゑさん

変わらぬ心意気でつくり続ける昆布巻き

魚の昆布巻き製造◎阿部 淳さん

お問い合わせ/マルキチ阿部商店 電話0225-53-2505

「すべてを失ったけれど、女川と水産業から離れられない。だとしたら、もう一度立ち上がるしかない」。それが少しずつ沸き起こってきた感情だったと言います。知人・友人に設備を借り、昔のように訪問販売したり、仙台や東京まで売りに行ったりする苦闘の日々を乗り越えてきました。「マルキチさんの昆布巻き待ってるからね、というお客さんの声に励まされましたね」とマルキチ阿部商店・阿部淳専務(40)は振り返ります。
今夏、元の場所とは違いますが、港の目の前で新工場を稼働。宮城県水産加工品品評会で農林水産大臣賞を受賞したときに記念につくった木の看板が、奇跡的に発見されて戻ってきたので、調理場の入り口に掲げました。女川港で水揚げされるサンマなど新鮮な魚を、肉厚でうま味のある唐桑産の昆布で巻いて、秘伝のたれで3時間も煮込んだ昆布巻き。定番のサンマのほか、アナゴ、シャケ、マグロなど。骨まで軟らかくなり、海の幸をまるごと賞味できます。
「1日につくれるのは700本ぐらいですが、手づくりのおいしさを実感してもらえれば、それが一番」と阿部さんは話します。

新工場

新工場目の前の港の眺め

自家製秘伝のたれでじっくり煮込む

マリンパル女川おさかな市場の店舗にて阿部専務

みやぎの食のために、今できること。賛同企業の取り組み。

県内生産者・事業者と連携して、食の復興を応援

みやぎ生活協同組合

2011年7月、宮城県内の農業・漁業者や食品関連事業者が、互いに励まし合いながら地域復興を目指す「食のみやぎ復興ネットワーク」を結成。仙台白菜プロジェクト、なたねプロジェクト、わたりのそばプロジェクトなど復興応援プロジェクトを立ち上げ、被災した生産者の支援や地場産業の復興を目指すほか、地場素材を使った商品を開発し、利用呼び掛けを行っています。みやぎ生協では、県内で復興を目指して頑張る生産者・企業やその商品を応援する活動を積極的に進めています。

わたりのそばプロジェクト主催「そばの花見会」
(2014年9月/山元町)

被災地気仙沼から東京につながった、遠洋マグロ

サントリービア&スピリッツ株式会社

気仙沼市の遠洋マグロ漁業・八幡水産は震災で漁船を失いましたが、公的資金とサントリーの支援によって、2012年に遠洋マグロはえ縄漁船「第5八幡丸」が建造されました。八幡水産では、さらにこの船で獲ったマグロを直接お客さまに届けたいと直営店をつくることになり、サントリーが店舗企画などサポートし、今年10月、東京・吉祥寺に「まぐろ漁船八幡丸直卸 ととぶつや」をオープン。鮮度管理と温度管理を徹底した最高のマグロを、一本まるごと「ぶつ」にして提供しています。

鮮度のいいマグロのぶつが評判を呼んでいる

「環境保全米」づくりで宮城の豊かな自然を守る

JAグループ宮城

JAグループ宮城では、みやぎの豊かな水と土を美しく保ちながら、自然豊かな環境を守るために、農薬と化学肥料の使用量を半分以下に抑えた「みやぎの環境保全米」づくりに取り組んでいます。自然と人が力を合わせて、おいしいお米づくりを行うことによって、より安全・安心なお米が全国の食卓に届けられているとともに、実際の調査で宮城の田んぼにはトンボやタニシなど多くの生き物が増えてきています。宮城の米づくりが、効果的に豊かな環境づくりにもつながっています。

田んぼの生き物調査

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