俳句(11/24掲載)

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【石母田星人 選】

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参道の真中を歩む神の留守  (石巻市小船越・芳賀正利)

【評】日本全国八百万の神が出雲の国に旅立たれる神無月。そのためどこの神社でも神様が留守になる。留守と言われると辺りの景もどことなくがらんとしているような違和感をおぼえる。いつもと違って参道の真中を歩んだのはその違和感のせいかもしれない。

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はるばると同級生の水見舞  (石巻市流留・大槻洋子)

【評】このたびの大雨で被害を受けられた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。さて、梅雨どきの集中豪雨の氾濫を出水(でみず)といい、秋のころの台風などによる出水は秋出水という。本来「水見舞」は、梅雨どきの出水と関連付けられて分類されている。だが見舞いという心に季節の壁などはない。片付けのさなか、突然現れた同級生の姿だ。友のありがたさが身に染みる。

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秋天を流るる雲の独り言  (石巻市北上町・佐藤嘉信)

【評】高齢の作者だが若々しい感覚把握の叙し方に注目した。ゆっくりと流れて行った雲。どんな独り言だったのだろう。メルヘン調の明るさも見える。

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サドルには霜まだ残るにちよう日  (多賀城市・佐藤久嘉)

【評】平日なら早朝すぐに払われてしまう自転車の上の霜。休日だからサドルに残っていた。にちようの仮名表記が、霜の強いイメージをやわらかく溶かす。

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海嘯に壊れし故郷鉦叩  (石巻市蛇田・石の森市朗)

片時雨鉄骨の錆八年半  (東松島市矢本・雫石昭一)

かりがねや父の遺品の硯箱  (石巻市中里・川下光子)

冬障子時を忘るる砂時計  (東松島市新東名・板垣美樹)

冬耕や校歌の山のくつきりと  (東松島市矢本・紺野透光)

台風や地球を浸し豪雨去る  (石巻市南中里・中山文)

腰かける石がひとつや秋桜  (石巻市広渕・鹿野勝幸)

この土がともあれ故郷熟柿かな  (石巻市開北・星ゆき)

山頂にひつそり立つや桔梗濃し  (仙台市青葉区・狩野好子)

男傘いいわけしつつ秋しぐれ  (東松島市矢本・菅原れい子)

水鳥が滑走するや霧の沼  (東松島市赤井・茄子川保弘)

七階の窓よりのぞむ霧の海  (石巻市三ツ股・浮津文好)

潮しぶき浴びて磯菊乱れ咲き  (石巻市門脇・佐々木一夫)

千羽鶴不随の妻へ文化の日  (石巻市恵み野・木村譲)

晩秋の夕日に染まる日本海  (東松島市矢本・奥田和衛)

農に生き農に死にたる冬の雲  (東松島市野蒜ケ丘・山崎清美)