コラム:メモ

 「忘れるためにメモをする」...社会人になったばかりのころ、ある本でこのような一文と出合いました。最初は理解できませんでしたが、しだいに分かってきました。

 今では自称「メモ魔」。いつも「小札(こざね)」を束ねたものを持ち歩き、気になったことや、ふと思い浮かんだことを書き込んでいます。風呂やベッドのそばにも置いているほどです。ただし、1枚に1項目。そして、書いてしまえばあとは忘れてもいい...。その小札を机の上に並べ、分類してから「やるべきこと」などを考えます。

 さて、「メモ」memo という言葉は、「覚え書き」を意味するラテン語の memorandum(メモランダム)に由来しますが、「メモをとる」「メモする」は普通 make / take a note あるいは write down(書き留める)と言います。また、memorandum は日本語の「忘備録」「覚え書き」にあたるどちらかというと格式ばった言葉です。

 今年も残すところあと1カ月あまり。書店などには来年の手帳が並んでいます。約束などを記す「スケジュール」管理はもっぱら手帳でなければなりません。私は毎年、決まった形式のものを求めています。

 「手帳」は英語で notebook、pocket-book、planner と言います。また、イギリスでは「日記」と同じ diary(ダイアリー)を好むようです。

 最近、メモをとらない、あるいは苦手な若い人が増えているとのこと。手帳の代わりに「スマホ」にメモをしている人もいるとか。自分は時代遅れかと思いつつ、これを執筆している間にも手元の小札に思い浮かんだことを書き込んでいます。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)