コラム:カタカナ語考(下) コロナ騒ぎの中で

 前回とりあげた「ロックダウン」についてぜひお伝えしたいことがあります。紹介させていただいたNHKラジオの人気番組「遠山顕の英会話楽習」の講師・遠山顕氏は「これは僕のイメージですが」と、次のような話もしてくれました。妙に説得力あり、感心したしだいです。

 中世ヨーロッパの都市国家を思い浮かべたのです。その門には時に堅牢な鉄格子の扉があり、上からガシャンと落ちて侵入者を防ぎ自衛する。 down の方向で都市は完全に封鎖( lock )されるという、まあこれはあくまで個人の発想ですが、言葉の学びには自由な想像力も大切なので...

 さて、「クラスター」は「群れ」「集団」を意味する英語の cluster に由来します。元々は「ブドウの房」のこと。「集団感染」という和訳は妥当なものでしょう。

 そして、「オーバーシュート」。 over - shoot という英語に由来するこの言葉が「感染爆発」と訳されているのが気になります。

 ご承知の通り、 over は「~を越えて」、 shoot は「撃つ」「発射する」。 overshoot は「ある地点を行き過ぎる」「限界や限度を超える」(オックスフォード現代英英辞典)。つまり、「目標値や限界値のラインがあって、それよりも超えてしまう」という意味の言葉です。

 これが新型コロナでは「何も対策をしなければ、低いピークに抑えた場合よりも多くの感染者数が出る」状態を overshoot としているので、これに「爆発的な感染者の増加」という意味での「感染爆発」と用語を与えていることには、いささか疑問を感じるのです。

 以上、新型コロナが広がる中、飛び交う用語について気になることから、3回にわたってまとめてみました。