【石母田星人 選】
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リハビリの静止三分春の雪 石巻市小船越/三浦ときわ
【評】機能面の能力の低下やその状態を、特定段階まで回復させることは大変なことだ。強い意志も大切だが、訓練を指導する専門職のスタッフや家族など、多くの支えがあってこそ成し遂げられる。この句は、そんな訓練の様子を描いている。リハビリでなくても静止の3分はきつい。それに耐えて体の力を抜くと、窓外に春の雪が舞っているのに気づいた。力のこもる中七から春の雪への解放感が印象的だ。頑張って。
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早春の庭に陶器の栗鼠隠れ 石巻市小船越/芳賀正利
【評】雪解けの日差しまぶしい庭。昨日まで見えていた陶器のリスが見えなくなった。毎年、春先に姿を消す。後日リスが戻ると庭は春一色に変わる。幻想を伴う句と読めるのは「隠れ」のイメージによる。
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避難所の仮設トイレの霙かな 石巻市三ツ股/浮津文好
【評】強制移動を余儀なくされた作者。最初に身を寄せたのが避難所。そこでの記憶は狭い仮設トイレを出て仰いだ霙(みぞれ)の空。暗い空から不安が降っていた。
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窓大きく開けて青空揚雲雀 東松島市矢本/雫石昭一
【評】「開けて」「青空」「揚雲雀」と頭の「あ」の音をそろえた。明るい「あ」音には躍動感が見える。「大きく」には冬からの解放感が込められている。
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春泥によろけ捜しぬ家族(うから)の身 石巻市開北/星ゆき
春星や親に縁のなき子つれ 石巻市蛇田/石の森市朗
涅槃像津波知らせた人何処 石巻市元倉/小山英智
春色の海変らずに十年目 石巻市門脇/佐々木一夫
復興の起重機ゆする春一番 多賀城市八幡/佐藤久嘉
巻石にそっと触れゆく春の川 石巻市蛇田/高橋牛歩
漁網干す磯に朧の夜が来る 石巻市相野谷/山崎正子
冬花火仰ぎて祈る漁師かな 石巻市駅前北通り/小野正雄
西方に浄土あるとや寒鴉 石巻市丸井戸/水上孝子
連翹や青空深く陽を弾く 東松島市矢本/紺野透光
足首を引き寄せてゐる春の泥 東松島市新東名/板垣美樹
鳥たちの忙しき影や春めきて 石巻市広渕/鹿野勝幸
豆飯や医療にはげむ子と会話 仙台市青葉区/狩野好子
古を語り出すかな雛巡り 石巻市中里/川下光子
蟹缶や思ひを馳せる多喜二の忌 石巻市南中里/中山文
ハンカチにそっと包んで春苺 石巻市吉野町/伊藤春夫