コラム:public servant

 先月の中旬、米国テキサス州は30年来の寒波に襲われ、14日には一部地域で摂氏零度に達しました。停電により暖房装置が使用できなくなり、また水道管の破裂も伴って数百万人が生活の基盤を失う大惨事に。

 その最中、日本のメディアであまり報じられていませんが、同州選出のテッド・クルーズ(Ted Cruz)上院議員がメキシコのリゾート地へ家族旅行したことが明らかになりました。非難の嵐に見舞われたのも当然でしょう。"public servant"(パブリック・サーバント)...議員の行動を評するCNN放送のコメンテーターから発せられたこの言葉が、とても新鮮に感じられました。

 "public servant"は普通「公僕」と和訳されていますが、最近日本のメディアではあまり用いられないように思われます。しかしながら昨今の世相、特に政治の世界で起きているさまざまな不祥事に接するとき、この言葉の持つ重みを再認識しないではいられません。

 「僕(ぼく)」は「人につかわれる男。しもべ。下男」という意味(広辞苑第7版)。「公僕」は「広く公衆、公共に奉仕する者」として官僚など公務員を示す言葉ですが、政治家を指すこともあります。

 public に対する英語は private(プライベート=私的の)ですが、クルーズ上院議員は家庭すなわち private を優先したことから非難の的となったという訳です。

 また、イギリスでは市町村の市民課などに勤務する「一般事務職」の場合は、civil servant と呼ばれます。

 政治および官僚機構において地位が高くなればなるほど、「私物化」はもってのほか。「自分は国民全体に奉仕する servant」という意識を忘れないでほしいものです。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)