2023年度石巻かほく「短歌」 日野信吾さん、初の最優秀賞

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 2023年度の「石巻かほく」短歌の最優秀賞が石巻市あゆみ野の日野信吾さん(76)、優秀賞は東松島市矢本の高平但さん(70)、石巻市流留の大槻洋子さん(76)に決まった。日野さんは初の最優秀賞。選者の斉藤梢さんが選考した。

<選者・斉藤氏から>

 最優秀賞は、日野信吾さんの10月22日掲載の作品<あかあかと秋の夕日のしずむころ土手ゆく人の影うつくしき>。しみじみと味わいたい一首。作者が感じた美しさを、読者も共有しようとして想像することは、歌を読むよろこびの一つだろう。短歌という定型があるからこそ、表現できた「うつくしき」。日常の暮らしの中には、すくい上げて詠むべきことがまだまだ多くあることに、気づかせてくれる作品。韻律もよく、魅力的な抒情歌。

 優秀賞は、高平但さんの2月26日の<夢の中だけでもいいから逢いたくて「震災前行き」列車を待ちぬ>。3月11日が近づくと、上句におさめられている願いはさらに切実なものとなる。震災前の<あの時>に戻りたくて待つ列車。言葉にし難い悲しみが、まっすぐに伝わる。

 同じく優秀賞は、大槻洋子さんの<深掘りは自分をこわしそうだから明日は歩こう明るい外を>。詠むことは、心を調えることにもなる。自分を見つめ過ぎる手前で、作者の思いは「外」へと向く。「明日」とは、未来のこと。心の葛藤を的確に表現して、自身をも励ます一首。

◇受賞者の声/最優秀賞・日野信吾さん
20240317-001.jpg 短歌の投稿を始めて3年。受賞は予想もしていませんでした。ただただびっくりしました。
 題材は新聞からヒントを得ます。地域や景色、親兄弟のことなどを詠みます。
 南郷町(現美里町)の生まれ。生家は貧しく、中学卒業後働きましたが、父母の愛は今も感じます。忘れ得ません。6人いたきょうだいは2人になりました。心象風景に残るのは南郷の一面の水田です。
 12月に第1席に選んでくれた<生き抜かんただ生き抜かん我が胸に赫々燃える朝日昇りぬ>。大きな心の支えを失った直後の歌だっただけに、斉藤梢先生に自分の心を分かってもらってすごくうれしかった。
 何回も推敲(すいこう)を重ねないと、なかなか思うように定型に収まりません。俳句も川柳も詠みますが、短歌は情景を見ながら、心を詠む文芸。自分と向き合わないと詠めないものです。