俳句(7/13掲載)

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【石母田 星人 選】


船縁の擦れる音や五月闇   石巻市新館/高橋豊

【評】いつもは気にしない船縁の擦れる音。今夜ははっきりと響いてくる。梅雨時のこの暗さのせいだ。切字「や」の後の一呼吸が、五月闇の空間を広げる。


手のひらに照り輝くやさくらんぼ   石巻市水押/阿部磨

【評】初物の高価なさくらんぼ。手のひらにのせてしばし眺める。つやつやと赤い光は芸術品のようだ。


草むしり白髪頭を日がむしり   石巻市門脇/佐々木一夫

【評】草むしりの句がたくさん届いている。済んだ後の爽快な気分を詠んだ句が多いが、ここは作業中の描写。帽子の上から襲ってくる日差しを、頭で感じている。過酷さも思うが独特のリズム感にひかれる。


風神のおいでくださる夏座敷   石巻市丸井戸/水上孝子

鰹来て三陸沖は盛り上がり   石巻市渡波/阿部太子

青やませ波打ち合いてより白し   石巻市中里/佐藤いさを

無念なり跡継ぎなくて草いきれ   石巻市桃生町/佐藤俊幸

はまなすの花びら一つ文に入れ   石巻市流留/和泉すみ子

白無垢や嫁入り舟のあやめかな   東松島市赤井/志田正次

潮風に胸襟ひらき貝風鈴   石巻市蛇田/石の森市朗

露天風呂湯音奏でる夏至夜風   石巻市湊/斎田流雲

ひと雨の過ぎたる城の夏木立   石巻市桃生町/西條弘子

松島の松の芯なり総立ちて   石巻市広渕/鹿野勝幸

海霧深し板碑に残る歌枕   松島町磯崎/佐々木清司

風光る駅前広場の鼓笛隊   石巻市小船越/芳賀正利

実桜の小さきままに百日目   石巻市流留/大槻洋子

五月雨のなくて天地ふぬけなり   石巻市開北/ゆき

梅雨空をアナベル孕む大らかさ   東松島市矢本/田舎里美

西口のずんだシェイク薄暑かな   石巻市中里/川下光子

渋柿にまた豆柿に柿の花   多賀城市八幡/佐藤久嘉

海鞘祭詰め放題の長き列   石巻市向陽町/成田恵津美

海鞘むいて億年の海の味を食う   石巻市駅前北通り/津田調作

庭先に夏菊咲きて手を合わす   東松島市矢本/奥田和衛

雨に濡れ額紫陽花の凛として   石巻市桃生町/西條和江

猛暑日や待合室の赤子かな   東松島市矢本/菅原京子