コラム: 高層マンション

 「マンション」を初めて知ったのはブラザーズ・フォア( The Brothers Four )のこの歌です。

 I may not have a mansion
 I haven't any land
 Not even a paper dollar
 to crinkle in my hands
   大きな家を持てない
   土地も持っていない
   一枚の紙幣さえ持っていない
   手の中でしわくちゃするような
 But I can show you morning
 on a thousand hills
 And kiss you and give you seven daffodils
   でも、朝を見せてあげられる
   千もの丘の上で口づけをして
   七つの水仙をあげられる

― Seven Daffodils より(大津拙訳)

 「アパートの鍵貸します」。ビリー・ワイルダー監督・脚本による都会派コメディの代表作。出世の足掛かりにと、上役の情事のために自分のアパートを貸している会社員を中心に展開します。

 アパートは木造や軽量鉄骨造の2~3階建ての共同住宅を指し、マンションは鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の3階建て以上の共同住宅を指すことが多いようです。現代社会においてマンションは一つの「ステータス・シンボル」となり、高層になればなるほど、その「ステータス」は際立つようです。

 上へ伸びるほど高級感が増すというのが人間の一般的心理でしょう。一般に手が届かぬところに豪邸を手に入れることの優越感は相当なものと考えられます。「高層マンシヨン」というものはこういった人間心理をついたものかもしれません。

 香港でのこの度の悲劇は、土地が狭く上は上へと伸びるしかなかったという事情を考えるにせよ、人間の「業」のようなものがもたらしたと考えずにはいられません。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)