「乾坤一」という酒があります。宮城県の村田で仕込まれる酒で、300年以上の由緒ある銘酒として広く知られています。15年前の東日本大震災で壊滅的な被害を被りましたが、その後生産を再開し、今も多くの人に愛されています。私もこの酒が大好きで、折に触れ親しい人たちと酌み交わしたものです。
「乾坤一」という名前の由来は、運を天に任せて大勝負をするという意味の熟語「乾坤一擲」にありますが、調べてみると、実は江戸時代には「不二正宗」と呼ばれていたそうです。しかし、明治初年に蔵を視察に訪れた宮城県知事から提案されて改称したのだとか。
その「乾坤一擲」にあたる英語は何でしょうか。
手元の辞書によれば「 all or nothing 」とあります。「乾坤一擲の勝負に出る」は「 play for all or nothing 」と言うそうです。「一か八か」の勝負というわけですから、この「乾坤一」という銘柄、いかにも豪快に飲みほす日本酒にふさわしい名前といえますね。
ちなみに、「一か八か」とよく似た言葉に「のるかそるか」があります。
「新和英大辞典」によれば、これに該当する英語表現にはいろいろあり、
sink or swim
win or lose
make or break
hit or miss
などが並んでいます。なかなか面白いですね。
大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)