【石母田 星人 選】
凍星を睨み返して震災忌 石巻市二子/小松道男
【評】俳句は抒情(じょじょう)詩。抒情は、対象物に触れ感情の高まる時と静まる時に起こる。抒情を直接言わないで表現の裏に潜ませて書くのが俳句。「睨(にら)み返して」に潜むのは怒りの抒情。感情を抑えてきた我慢の日々。怒りがひょっこり顔を出して、こうして詩になった。
寒明けて宙を返すやインパルス 石巻市丸井戸/水上孝子
【評】寒明けの大空を飛行するブルーインパルス。一糸乱れぬ様子が分かる「宙を返す」の表現が巧み。
天上へ潔しかな揚雲雀 東松島市あおい/木皿ゆきこ
【評】急逝した友へとあった。鳴きながら真っすぐ舞いあがってゆくヒバリ。友人は高潔な人だった。
耀きて命沸き立つ春の海 石巻市門脇/佐々木一夫
胸に刻む万里の波濤震災日 石巻市元倉/小山英智
花咲かせ皆を弔う日和山 石巻市新館/高橋豊
里山に笛吹童子春を告げ 石巻市向陽町/大渡清
さりさりと粉雪呑むや井戸の闇 東松島市矢本/田舎里美
枯木星老眼によく沁み入りぬ 石巻市駅前北通り/小野正雄
限界へアスリート今風光る 石巻市小船越/堀込光子
薄氷や煙たなびく凪の朝 東松島市赤井/志田正次
枯蘆原鳥飛び込んで行ったきり 石巻市桃生町/西條弘子
風花や異国のやうな森に入る 石巻市中里/川下光子
春光や旅立つ君の眼の強き 石巻市流留/和泉すみ子
片言の言葉をうける犬ふぐり 石巻市桃生町/佐藤俊幸
スタンプのなきパスポート西行忌 松島町磯崎/佐々木清司
政宗もこらえながらに伊予蜜柑 多賀城市八幡/佐藤久嘉
廃屋の社名透かして蔦枯るる 石巻市流留/大槻洋子
何気なく春めく山を見てうたふ 石巻市小船越/芳賀正利
湯治湯の客もまばらに斑雪 石巻市湊/斎田流雲
方形の苔土立たせ臥竜梅 石巻市開北/ゆき
散髪のあとの襟足冴返る 石巻市広渕/鹿野勝幸
煮凝に熱き湯を差す浜育ち 石巻市蛇田/石の森市朗
佐保姫も花柄たもと振る明日 石巻市渡波町/小林照子
春寒しマルコポーロといふ紅茶 東松島市矢本/菅原京子