2025年度石巻かほく「短歌」 大槻洋子さん、初の最優秀賞

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 2025年度の「石巻かほく」短歌の最優秀賞に石巻市流留の大槻洋子さん(78)が初めて選ばれた。優秀賞は石巻市桃生町の佐藤俊幸さん(75)、石巻市南中里の中山くに子さん(95)。選者の斉藤梢氏が選出した。

◇選者・斉藤氏の評

 最優秀賞は、大槻洋子さんの3月16日掲載の作品<「登りこよ」言うがごとくに荻浜の暗き海へと天使の梯子>。
 天上の人と地上の人とを繋いでいる「天使の梯子」。この見立てに心が痛む。東日本大震災で命を失った人の声としての「登りこよ」は、作者だけにしか聞こえない切ない希求。あの日から続く予測できなかった多くの喪失と悲苦は、このように定型に収められて残る。
 <異世界にのまれるように逆光の朝の空き地に人影消える>は、独自の感覚を詠んでいて印象深い。言葉を丁寧に的確に選んでいる大槻さんの努力を評価したい。

 優秀賞は、佐藤俊幸さんの11月23日掲載の<右の手の温み伝えて種に言う君は元気だ発芽できるよ>。種に話しかけて、種と共に生きようとする姿勢をこの一首に見る。「右の手の温み伝えて」は、農を尊ぶ作者らしい。土と種と人間を真摯(しんし)に詠む。

 同じく優秀賞は、中山くに子さんの6月8日掲載の<朝散歩ひきよせられて藤の下 肌まで染まるうす紫に>。実感を表す「ひきよせられて」が良い。藤の花房の下に立っているからこその「肌まで染まる」。饒舌(じょうぜつ)でなくても伝わる藤の美しさ。感性ゆたかな作品。

 一年間、多くの歌と出会うことができました。感謝いたします。

 

受賞者の声

【最優秀賞・大槻洋子さん】

20260315.jpg 受賞の知らせを受け、びっくりしました。夢のようです。
 受賞作は、老人クラブの新年会で訪れた荻浜でちょうど海を照らす光の柱が見えた光景を詠みました。きれいで思わず撮影しました。「登りこよ」。東日本大震災の津波で見つかっていない人が多いと聞きます。
 7年前、初投稿の作品が採用され、短歌の世界にのめり込みました。新聞とテレビによる独学です。新聞を切り取って、ほかの人の作品を何回も読み返します。我流でリズムなどを学んでいます。
 はがきにまとめるのは日曜朝から午後2時ごろまでかかります。投函する直前、最後の最後まで辞書を引きます。
 毎日、近くの万石浦を散歩します。立春や重陽の節句など、季節を探しに海や山に出かけます。浮かんだ言葉、歌の原型をスマートフォンにメモします。言葉を選んで紙に書き、形を整えて何回も推敲(すいこう)します。メモにはだいぶ前の言葉も残っています。
 言葉一つを見つけるまで、ずいぶん時間がかかります。趣味のクラフト、裁縫に向き合って無心になっていると、突然言葉が降ってくることもあります。
 短歌には自分の気持ち、心の内が出る感じがします。本音を全く明かしたくないのに、読み返すと自分でも「ここまで言うかな」と思うことがあります。選評で、自分の歌が立派に、大きくなっているような気がしています。