俳句(4/26掲載)

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【石母田 星人 選】


笹舟に小川の水も温みけり   石巻市小船越/芳賀正利

【評】「けり」の強い詠嘆が目につくが、優しさにつつまれた一句。ここには子どもの存在が省略されている。笹舟を操る小さな手と歓声が春を連れてきた。


言の葉を野に鏤める雲雀かな   石巻市新館/高橋豊

【評】広い野原のあちこちに歌うような雲雀(ひばり)の声。雲雀の言葉が分かったらどんなに楽しいだろう。動詞「鏤(ちりば)める」を聴覚に用いて成功。気持ちのいい空間。


春一番われ動力と浮力得る   石巻市開北/ゆき

【評】春先の強風に後ろから押され、体が持ち上げられるような感覚を得た。「動力と浮力」が面白い。体内に新たなエンジンを装填(そうてん)したようにも読める。


畦塗や農夫の気迫見るごとし   石巻市広渕/鹿野勝幸

美味しさを息まるくして蜆汁   石巻市丸井戸/水上孝子

雑木山膨らんでくる鳥の恋   石巻市桃生町/西條弘子

弱虫と見せかけて舞う蝶の昼   石巻市桃生町/佐藤俊幸

しつとりと垂れる桜や地の息吹   東松島市あおい/大江和子

海よりの風と遊べる桜かな   石巻市蛇田/石の森市朗

駅からはそれぞれ家路夕桜   松島町磯崎/佐々木清司

桜開花老いの目玉も細くなり   石巻市駅前北通り/津田調作

浜若布平和な海が吹きこぼれ   多賀城市八幡/佐藤久嘉

震災忌両手そろへてたたむ記事   石巻市流留/大槻洋子

肌寒し祈る日部屋に黙しゐる   石巻市駅前北通り/小野正雄

鯉跳ねて川に春の輪十重二十重   東松島市矢本/田舎里美

竜天に登る姿を誰も見ず   石巻市向陽町/大渡清

朝もやに覆はれ進む蜆船   石巻市桃生町/西條和江

夕霞山のあくびは広がりて   石巻市流留/和泉すみ子

鍬洗うつましき暮し春夕べ   石巻市元倉/小山英智

しゃぼんだまピアノと旅すポロロンロ   石巻市渡波町/小林照子

少年のフォロースルーや風光る   石巻市小船越/堀込光子

梅一枝手折ることさえ憚られ   東松島市赤井/志田正次

キャンパスの赤い自転車花の雨   東松島市野蒜ケ丘/山崎清美

星取表推しの力士は春荒れて   石巻市湊/斎田流雲

春雨や法話を聞きにバスに乗る   石巻市のぞみ野/阿部佐代子