今頃の季節になると、よく口ずさむのが「夏は来ぬ」です。
卯の花の、匂う垣根に
時鳥(ほととぎす)、早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす、夏は来ぬ
...
この童謡はこの季節の定番とも言えるもの。特に最後の「夏は来ぬ...」(英語では Summer has come. )は私たちにはなじみ深いものです。
5月から6月に開花する「卯の花」は新緑の中でも、ひときわ目立ちます。旧暦の4月を指す「卯月」(新暦では5月に相当)は、この花の名が由来になっています。ちなみに豆腐の搾りかす「おから」を「ウノハナ」呼ぶのは、この白い小花の咲いている姿と似ているからです。
「夏は来ぬ」は1896(明治29)年に佐佐木信綱作詞、小山作之助作曲で発表されました。文部省唱歌です。
「夏は来ぬ」を「夏はこぬ」と読んだ人がいるとか...。「なかなか夏は来ない」( Summer does not come. )と勘違いした人もいたようです。佐佐木信綱は高明な国文学者で、このような文語表現になったのです。
垣根には白い「卯の花」(ウツギの花)が咲き誇っている。そこへ、夏を告げる鳥「ほととぎす」が、早くもやって来て鳴いている...
「夏は来ぬ」というフレーズは、「夏がやって来た」という喜びと実感を何度も繰り返していると考えられます。
1940年ごろ、NHKラジオの歌謡番組で繰り返し放送されましたが、第2次世界大戦後に国定音楽教科書に掲載されたのは1番と5番のみでした。
大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)