コラム: 歳月、人を待たず

 中学1年の頃、英語の先生が黒板に大きく書いた次の言葉を覚えています。

    Time and tide wait for no man.

 tide とは「月と太陽の引力によって引き起こされる海水の満ち引き」。つまり「潮」のこと。「 time and tide 」で「時」を表します。先生の書いた言葉は、「年月は人の都合に関係なく、刻々と過ぎてゆき、とどまることはない」といった意味ですが、先生はこの諺(ことわざ)を通じて、「時間を大切に」ということを生徒の僕たちに伝えたかったのでしょう。

 「時」は待ってくれない。この事実は年を取るたびに事実として迫ってきており、特に、ここ数年は、日々実感する次第です。

 時に関する英語の諺のもう一つは、

    First come first served.

 「最初に来た者が最初に食物を供せられる」といったことですが、「早い者勝ち」の意味でよく用いられる諺ですね。「人より先に行動を起こせば、他人を抑えて自分が有利になる」「先んずれば人を制し、遅れれば人に制せらる」ということです。

 これについては僕はちょっと困惑気味です。競争に明け暮れるこの世の中にあって「先んずれば」ということが、果たしてあるべきことなのかと、疑問を抱くからです。そう考える僕は、今の世には馴染まない存在なのかも...。「甘い」と言われるかもしれませんが。

 こうした英語の諺を通じて、いろいろと考える私です。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)