【石母田 星人 選】
岳下りるゆとりの道に額の花 多賀城市八幡/佐藤久嘉
【評】たくさんの額の花に迎えられて一安心。読む者にも広く緩やかになったゆとりの道が見えてくる。
マンションに積木の灯り星祭 松島町磯崎/佐々木清司
【評】晴天ならば今日の夕刻、西空には月と金星が見え、東空には、わし座の彦星と、こと座の織り姫が見える。七夕まつりは、あの二星の天上の恋物語だ。地上へ目を移すと人間のともす四角い灯り。その一つ一つのぬくもりが、星の物語と呼応して響き合う。
梅雨明や売場を走る掃除ロボ 石巻市蛇田/石の森市朗
【評】「走る」に注目。この動詞で無機質なロボに人格が備わる。梅雨明けの明るさを楽しんでいる。
紫陽花や釉薬重ね窯の中 石巻市新館/高橋豊
梅雨出水怒濤となりて山動く 東松島市あおい/大江和子
竹林の枝葉を揺らす風は初夏 石巻市小船越/芳賀正利
吹かれ寄る風の匂ひの竹落葉 石巻市桃生町/西條弘子
白日傘都会の匂ひ纏ひけり 石巻市流留/和泉すみ子
秘境駅旅のノートに青しぐれ 石巻市向陽町/大渡清
一輪の手折りしバラの雫かな 石巻市中里/川下光子
オリーブのつぼみへ朝の遠回り 石巻市流留/大槻洋子
珈琲の湯気の向こうに迎え梅雨 東松島市赤井/志田正次
思い馳せ日和の城に梅雨の雷 石巻市湊/斎田流雲
一升餅背負いて笑う梅雨晴間 石巻市渡波/伊藤奶奶
はたた神しっかりしろというように 東松島市野蒜ケ丘/山崎清美
獲れたての何もかけずに夏料理 石巻市桃生町/佐藤俊幸
小猫抱く路地の陰りの梅雨寒し 石巻市元倉/小山英智
磯香る殻の風情や海鞘の味 東松島市矢本/田舎里美
痩せさんま腸まで食べてほろ苦し 石巻市渡波町/小林照子
夕影やニラのするどき芽の伸びる 石巻市駅前北通り/小野正雄
飛び込んで燕の内覧ホバリング 石巻市小船越/堀込光子
初飛行つばめ集まり祝い舞 石巻市二子/小松道男
蛍舞ふ流れの淀の清らかさ 石巻市水押/阿部磨
磯浜でひじき刈りをる老夫婦 女川町旭が丘/阿部重夫
稽古終えしだれ桜の寺参道 石巻市桃生町/西條和江