河北新報特集紙面2012

2012年10月11日 河北新報掲載

vol.5 学ぶ意欲 守りたい。

「今できることプロジェクト」とは、市民の皆さん、企業・団体の皆さん、河北新報社が一緒になって、これからの被災地・被災者支援のあり方を考え、具体的なアクションへとつなげていくプロジェクトです。紙面では毎回、実際に行われている支援の事例を、いくつかの支援スタイルに分けて取り上げ、支援する立場の人と支援を受ける立場の人、双方の生の声をご紹介します。
今回のテーマは、被災地の子どもたちと一緒に学んだり、勉強会を開いたりする「学習支援」のスタイルです。

学習サポートのボランティア 仙台市青葉区の会社員 阿部全朗さん(43)

子どもの学習をサポート その明るさから元気もらう

被災地で子どもたちの学びの場を支援するボランティア活動が広がりを見せています。

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NPO法人「アスイク」が主催する学習サポートのボランティア活動に参加しています。仮設住宅の集会所で週1回開かれる勉強会に行き、小学生2人の勉強を見ます。担任制を取り、マンツーマンに近い形で教えているんですよ。
震災後、当時住んでいた山形市から石巻市にがれき撤去のボランティアに通いました。阪神淡路大震災のときは学生で、何もできなかったという後ろめたさが残っていたんです。今度こそは役に立ちたいという思いでした。今年4月に仙台に転勤になり、アスイクの活動を知って携わることにしました。
活動には、教育に関心のある大学生や社会人なら誰でも参加できます。休むときにはほかの会場の担当者が応援に行く仕組みです。気軽に続けられるので助かります。
勉強会に行くと自分が元気づけられます。子どもは明るいし、ボランティアの仲間もしっかりした考えを持っている。楽しみや成長の糧になっていますね。
子どもたちはみんな、多かれ少なかれ震災の影響を受けて傷付きました。学校でも家庭でも、落ち着いて勉強のできる環境ではなかったのではないでしょうか。週に1度ですが、わいわい楽しく、勉強できる環境を整えてあげたい。思い切り遊び、勉強して、それぞれが幸せな人生を歩んでほしいと願っています。

アスイクの勉強会に参加している 仙台市若林区・荒浜小5年 松木諒馬くん(10)

分かりやすく楽しい先生 応援の声に「いつか自分も」

学習支援を受ける子どもたちは、ボランティアとの交流を楽しんでいます。

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今年の春ごろから勉強会に来ています。きょうは漢字のプリントや学校の宿題の計算ドリルをやったりしました。勉強はけっこう好き。一番好きな教科は図工です。
勉強会はいつも楽しみ。ボランティアの先生が分かりやすく教えてくれます。この前は公約数や公倍数の簡単な出し方を習いました。先生たちはとっても話しやすくて面白いです。なぞなぞを出し合ったり、いろいろな話をしたりします。
将来の夢は電車の運転士です。特急電車や通勤電車、線路のゆがみを調べる検査用の電車も運転してみたい。頑張って勉強しないといけないかな。
僕の家は津波で被害を受けました。いまは仮設住宅で暮らしていますが、自分の家っていう感じがしない。普通の家に住みたいなと思います。学校も被害を受けて、東宮城野小(仙台市宮城野区)に間借りしています。学校には千羽鶴がたくさん飾ってあり、全国から応援のメッセージが届きました。
お礼に送った横断幕には「ありがとう」と書きました。応援してくれる人がたくさんいると思うと、元気が出ます。もしほかの地域で大きな災害があったら、僕もボランティアに行きたいです。

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◎ NPO法人アスイク 電話 022-781-5576

被災した家庭や経済的に困難な状況にいる子どもたちの教育問題に焦点を当て、支援活動に取り組んでいます。仙台市内の仮設住宅など8か所を拠点に小中学生、高校生の学習をサポート。原則として、週に1~2回の活動に3ヵ月以上継続して参加できるボランティアを募集しています。

このほかにも、子どもたちの学習をサポートする取り組みがあります。いくつかご紹介します。

  1. 1災害子ども支援ネットワークみやぎ(仙台市) 電話 022-279-7239
    仙台市や多賀城市などの仮設住宅団地で子どもの勉強と遊びの世話をする。学習支援(経験者)と遊びの支援の2種のボランティアを募集している。
  2. 2NPO法人底上げ(気仙沼市) 電話 0226-25-9670
    気仙沼市のコニュニティースペースなどで学習支援の活動を行っている。全国から集まった大学生らがボランティアとして活躍。地元の参加者も募集している。
  3. 3一般財団法人学習能力開発財団(仙台市) 電話 0120-001-296
    研修を受けた大学生や社会人のボランティアが、震災遺児を対象に学習支援を行っている。