河北新報特集紙面2013

2014年2月10日 河北新報掲載 情報発信型支援《セミナー&バスツアー》レポート

情報発信型支援《セミナー&バスツアー》レポート

「今できることプロジェクト」では、被災地・被災者の今をより多くの人に伝えることによって、現地に訪れることができない人にも現状を伝え、震災の風化を防ぐことにつなげようとする「情報発信型支援」を、参加者の皆さんとともに、実行しました。

学んで、実践して 情報発信の大切さ

震災からまもなく3年。被災地や被災者にとって、今必要なことはどんなことでしょうか。そして今私たちにできることは何でしょうか。さまざまな支援のあり方を探り、実行する活動を進めている「今できること」プロジェクトは、今回少しでも記憶の風化を防ぐために、「情報発信型支援」の取り組みを読者の皆さんといっしょに実践しました。
セミナーでは、情報発信の大切さ、フェイスブックなどによる具体的な発信の仕方を勉強し、バスツアーでは実際に被災地を訪れ、その場で情報を収集・発信してみようという実践活動を行いました。
(下に掲載したのは、当日参加者の皆さんがフェイスブックに投稿した記事の例です※クリックで拡大します)

被災地を知り、感じ、伝え、広げていく

バスツアーで訪れた閖上では、広大な更地の中に、日和山と朝市の会場がありました。訪れて様子を見ただけではわからないこともたくさんあります。景色から何を想像するか、現地の人の話からどんなことを学びとるか。真剣にメモをとる姿も多く見られました。自分なりに再整理してみることも大切です。そして今度は、自分のこととして、身近な人に、遠くの人に、まだ行ったことがない人に伝えたり、広げていく。方法は、自分でできることでいいと思います。これからも、それぞれに感じたこと、伝えたいことを発信していきましょう。それがきっと風化を防ぐことにつながっていきます。

《学習編》情報発信セミナー

● 2013年12月16日(月)・21日(土)
● 会場/河北新報社(まちかどブロガー須藤扶美子さんの講演、発信ツールの使い方などの講習)

《実践編》情報発信バスツアー

● 2013年12月19日(日)
● 訪問先/名取市閖上地区(日和山、ゆりあげ港朝市、ささ圭/各所にて講話)

プロジェクト通じてフェイスブック習得 情報発信の力に驚き

仙台市泉区
小野寺辰男さん(61)

今できることプロジェクトのセミナーをきっかけに、フェイスブックを使って情報の発信ができるようになりました。閖上のツアーでは、大勢のお客さんが朝市を訪れている様子や組合員のみなさんから受けた温かいおもてなしへの感謝の気持ちを投稿しました。自分で被災地に行ったときにも、感じたことや撮影した写真を掲載するようにしています。
昨年、長野県に住む友人を閖上に連れていく機会がありました。友人は復興が進まない状況に驚き、「自分が耳にする報道では、現状が伝わってこない」とつぶやいたんです。「では、私が遠方の友人たちに伝えよう」。そう考えていたところ、今できることプロジェクトの企画を知りました。
今までもボランティアに参加したり、被災地に行ったりしてきましたが、情報発信は時間や空間に縛られず、誰でも取り組める良い支援だと感じています。
フェイスブックを始めて驚いたのは、静岡県に住む甥とつながり、やり取りするようになったこと。甥は私の投稿を見て「被災地の現状を伝える草の根活動はとても大事だと思う。頑張って」と言ってくれました。素直な気持ちを大切に、楽しみを見つけながら情報を発信していこうと思っています。

情報を求める人がいる

埼玉県熊谷市
梶谷誠さん(45)

以前に仕事をしていた縁で、宮城県を第二の故郷のように思っています。震災の後は、ボランティアなどで毎月のように宮城や福島を訪れています。被災地の情報を知りたいと、河北新報の購読も始めました。首都圏では震災の話はほとんど聞かず、風化を感じます。
ですが、私のように、遠くにいても情報を得たいと思っている人がいます。私も今回の経験を埼玉の友人や職場の同僚たちに伝えたいと思います。

学んだこと発信したい

仙台市若林区
高橋愛実さん(18)

高校の卒業論文の課題をまちづくりにしようと考えています。被災地のことを学ぶだけでなく、宮城が元気になるような活動をしていきたいと考え、今できることプロジェクトに参加しました。
閖上の状況はテレビなどで知っているつもりでしたが、実はまったく知らなかったのだと気付かされました。学んだことを卒論に生かし、家族や友人たちにも見たこと、聞いたことを伝えていこうと思います。

支援の輪、大きなうねりに

ゆりあげ港朝市協同組合 櫻井広行さん(59)

ツアーでは、震災を経験した者としてみなさんに知っておいてほしいことをお話しました。
一つは「私たちの失敗を繰り返さないでほしい」ということです。地震が起きてすぐに避難をしていれば、あんなに大勢の犠牲を出さずに済みました。いろいろな世代が真剣に話し合える場と機会を作り、減災やコミュニティーの在り方を見直していかなければいけないと思います。
もう一つは、私たちが受けた支援への感謝の気持ちです。私たちが復興に向かって一生懸命取り組んでいる姿を見てもらうことでしか、その恩に報いることはできません。
私たちのこうした教訓や思いを、私一人で発信していくのは限界があります。1人でも多くの人に知ってもらい、発信してもらうことで、大きなうねりになります。新しい支援の形がいろいろと生まれ、世界中のモデルになれば素晴らしいのではないでしょうか。
私たちは朝市を多くの人に楽しんでもらえる、人の集まる場所にしたいと思っています。気軽な気持ちで遊びに来てください。

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