河北新報特集紙面2020

2021年1月16日 松島の新旧を訪ね、新たな賑わいが生まれる未来を。

松島の新旧を訪ね、新たな賑わいが生まれる未来を。

震災後、松島町の新たな名物づくりに挑戦した「たけのこ工房 吉左衛門」の丹野隆子さん。
そして、平成の大修理を終え、多くの参拝者で賑わう同町のシンボル「瑞巌寺」。
今回のバスツアーは、タケノコの産地として多くの期待が集まる竹林を訪ね、
その整備のお手伝いをしました。
そして、松島町観光協会の志賀寧会長をガイドに、
「瑞巌寺」の参道から庫裏(くり)、本堂までじっくりと見学。
宮城を代表する観光の名所、松島の素晴らしさを五感で感じ、再発見する機会となりました。

来春の芽吹きに期待しながら竹林の土壌作りをお手伝い

 この日、参加者を乗せたバスは松島町竹谷地区へ。上竹谷生活センターの駐車場に到着し、のどかな里山の風景の中を5分ほど歩くと、古民家で「たけのこ工房 吉左衛門」代表の丹野さんらが歓迎してくれました。参加者を母屋の中へ招き、タケノコづくりに着手する経緯や竹林の手入れなどについて説明。「正直、採算が厳しい状況ですが、より多くの皆さんに喜んでもらえるよう、できる限り頑張って続けていきたいと思っています」と結ぶ丹野さんに、参加者から温かい拍手が送られました。

 再び屋外に出て、母屋のすぐ裏手に茂る竹林の奥へ向かいました。やや勾配のきつい斜面を登っていくと、うっそうとしたモウソウダケの森が。そして、ポリ袋に入った大量の米ぬかが用意されていました。ボランティアの宍戸勇悦さんの説明とともに、参加者の手で竹の根元に散布。足元が不安定ながら、丁寧に作業を行っていました。

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竹林の清々しい空気の中で米ぬかを散布する参加者たち

 再び母屋に戻ると、隣接する工房でタケノコの真空パック詰めを見学。参加者の一人が「米ぬかはあくを抜くために煮る時だけでなく、土壌作りにも役立つんですね」と語りかけると、丹野さんの活動を支える産地直売所「ねまわりの野菜畑」会長の鈴木美喜子さんは「早朝に採取して3時間以内のものを加工するので、その新鮮かつ繊細な風味を生かすため米ぬかは使わないんですよ」と答え、参加者を驚かせました。
 一連の体験後、丹野さんと鈴木さんも同行し、次は「牛たん炭焼 利久 松島五大堂店」へ。ここでは、料理長の鈴木大地さんがこの日のため特別に手がけた会席料理を味わいました。タケノコのお吸い物や炊き込みご飯など、牛たん焼きとデザート以外、すべて吉左衛門のタケノコを使った献立づくし。そのおいしさに、会場は笑顔でいっぱいになりました。

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料理の説明をしてくれた利久松島五大堂店料理長の鈴木さん

長い時を経ても色あせない国宝の重みと荘厳な美を感じて

 午後は、丹野さんたちと別れ、「瑞巌寺」の山門で松島町観光協会の志賀会長と対面。境内をゆっくり歩きながら、各所で詳しい由緒や歴史を説明してくれました。本堂へ向かう途中、「参道沿いには、古くから茂る杉木立があったのですが、津波の浸水で半分を失い寂しい景色になってしまいました」と志賀さん。さらに、本堂前でも「これほど海に近い場所にあるのですが、本堂の被害は全くありませんでした。これぞ仏のご加護でしょうか」としみじみ語ってくれたのが印象的でした。

 さらに庫裏から入り、本堂内部へ。貴重な調度類、障壁画などを観覧し、普段は一般客が入れない大書院へ足を踏み入れました。そこで、志賀会長が講話。塩釜地区消防事務組合消防本部消防長として震災対応に奔走した数々のエピソードを話し、「私は、自分が経験したことを、観光協会の会長としてどのように役立てていくか考えています。同じく震災を経験した皆さんも、時々あの時の事を思い起こし、自分の命を守るためにどんな準備が必要か考えてみてください」と、参加者たちにメッセージを送りました。

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志賀会長が語る歴史背景やエピソードを聞きながら境内巡り


参加者の声

大場 亮太郎さん(仙台市青葉区)

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 松島におけるカキ養殖と竹林の関わりを興味深く聞きました。自分の周りに、松島のタケノコについて知らない人が多いと思うので、ぜひ教えてあげようと思っています。また、新型コロナ感染症の問題がこれほど深刻化している中、松島ではどんな姿勢で観光振興に取り組んでいるか知りたくて今回参加を希望しました。4月に訪れた時は客足も無く静かでしたが、今回、賑わいを取り戻しつつあるのを見て安心しています。

玉田 賢司さん・明美さん(富谷市)

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 竹林の中に足を踏み入れて、とても新鮮な体験ができました。タケノコの栽培は思った以上に多くの人の手が必要だと知り、何かもっとお手伝いができないかと思いました。今回の作業が簡単だったので、ちょっと物足りなくも感じています。「瑞巌寺」は平成の大修理後、初めての訪問となりました。志賀会長の詳しいガイドのおかげで、以前とはまた違った見方で見学できたので、とても良い経験になりました。

協賛社の声

東急リバブル 東北支店 木村 考さん

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 松島に息づく豊かな自然とその恵み、長い伝統にも触れることができ、とても有意義な時間を過ごすことができました。特に、伊達政宗公との関わり深い「瑞巌寺」で、その歴史背景を詳しく知ることができたのも良かったです。地域の魅力を知る上で、先人たちの努力が下敷きにあることを再認識することが大切だと学ぶ機会になりました。

KDDI 東北総支社 永村 仁志さん・留美恵さん

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 松島で育ったタケノコのおいしさを楽しむことができましたし、「瑞巌寺」では志賀会長が歴史や震災についてたくさんお話をしてくださったので、ただ見て回るだけではない、多くを得られる経験になりました。特に、10年前の震災を振り返り、自分ができる災害への備えについて考えるお話は、とても心に響く内容でした。

三井不動産 東北支店 芦田 茂さん

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 三井不動産は「街づくりを通して、持続可能な社会の構築の実現」を重点目標に定め、今回のような復興に関わる取り組みに参加することで、この目標及びSDGsの達成に貢献できるものと考えています。本日は、竹林整備という日頃できない体験ができ、ガイド付きの「瑞巌寺」見学で政宗公の街づくりの神髄に触れることもできて、うれしく思っています。

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